紅明
第二皇子とわたし の実は二人はこんな感じの夫婦だよっていう。
若干シリアス

:
「貴女は、私たちがしていることに対して疑問を持たないのですか」
「それは何に対してですか」

静かに書物を机に置き、じっと見つめ合う。戦への作戦を考えている手前、傍にいる妻のことに気が散ってしまう。
いつもであればこんなことを考えるなんてないのに。そしてこうした疑問を持ちかけても、普段であれば璃芳は直ぐに答えを出す。しかし今回は違った。応えではなく、何に対してなのかと、疑問に疑問で返答を出した。

「…世界を一つにするために、していることに対してです」

静かに答えた紅明に、璃芳は直ぐに口を開かなかった。
紅明の求めている答えは何なのか、それが自分の答えと合致するものなのか。どの言葉で伝えればその答えに近づくのか。冷静に、頭を働かせて答えを探し求めている。

「……それは愚問です」
「愚問、ですか」
「私は、戦というものを…知らないわけではありません。けれど世界を一つにする手段をしりません。今、紅炎様や紅明様が、この煌帝国が行っている世界を一つにする手段以外、知らないのです。だから私は、このやり方に対して何が間違いなのか、何が正解なのか、疑問を持つ材料がないのです」

ぐっと、語る璃芳は目を瞑る。しかしそれもすぐに終わり、ゆっくりと蒼い瞳を紅明に向けた。

「でも、信じる人はいます。信じたい方たちがいます。私はその方たちを信じて、自分のできることをしていくまでです」

ゆっくりと歩み寄り、机の上で固く結ばれた紅明の拳を包み込むように支える。まるで子供をあやすように、静かに手を撫でた。

「ですから私の答えは、"疑問にもちません"」
「…璃芳」
「私のすべては、紅明様なのです。あなたが私にくださるすべてが、私を成す全てなのです。だから紅明様が示してくださるものは、私の示すものにもなるのです」
「責任重大ですね」
「…少々、お話をしすぎました」
「いいえ、もっと聞いていたい」
「紅明様」
「わたしで出来ていく貴女をみるのは、とても、…とても、愛しい」

心地よいその撫でる手に、まるで夢を見ているような優しい気分を味わう。硬く結んだ拳を梳き、紅明は璃芳の手を包み返すように握る。


「私が、挨拶は口づけだと言えば、それがあなたの全てになりますか」
「はい」
「多くの人を殺して成り立ったものでも、私が与えればあなたは受け入れるのですか」
「はい、受け入れます」
「…誰かを殺してほしいと私が願ったら、貴女も願ってくださいますか」
「はい、願いましょう」
「貴女は、なんて、罪深い」


包み込む手を引き、自分へと引き寄せる。互いの首筋に互いの顔を埋め、ぬくもりを分かち合うように背中に手を回す。強く強く、縋る様な、滑稽で、愛おしい。


「あなたが与えてくださるものが全てなのです。私はそれ以外、何もいりません。貴方が与える全てを、私は信じて生きていきたいのです」


きっと二人とも、何か得体のしれぬものに怯えている。だからこそ余計に互いを知り、たがいを求め合ってしまう。自分の思う様なことへ運べるように、相手を求めてしまうのだ。
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