欲しい物は、たった一つ。

それは、恋人と同じ物。



センス0
(けれど欲しいのは、それじゃない)




『松浦から、欲しい物を聞け?そんなの・・・』

『頼む!克哉。それとなく、そんな話にしてくれればいいんだ!』

恋人に渡す誕生日プレゼントを、悩むのは誰だって同じ。

付け加えれば、相手が喜ぶ顔が見たいのもだ。

しかし、自分の自宅に招いて、それを聞いてくれなんて、無茶振りにも程がある。

「お代わりはいるか?」

「・・・はい。頂きます」

松浦のグラスに、御堂さんが選んだ紅色が満たされていく。

それを見詰めれば、微かに笑う気配を隣から感じた。

「君も、だろう?けれど、あまり飲み過ぎるなよ?克哉」

「分かってますよ。今日の主役は、松浦ですからね」

前日パーティーと称した食事会の主役を確認すると、ありがとうと松浦も笑顔を見せる。

その隣では、本多が俺には聞いてくれないのかと、御堂さんを茶化していた。

「君に、私の酌は必要ないだろ。ワインの味も分からない癖に、ザルみたいに呑むのだから」

「このワインが美味いんだから、しょうがないでしょう?それに酒は呑んで、なんぼだろ?」

「本多。一応、言っとくけど、これ高い奴だよ」

「・・・お前は、猿の大酒飲みか。もう少し、嗜むと言う事を覚えろ」

松浦と二人で御堂さんを味方すれば、チェッと言う舌打ちと共にグラスが傾く。

今度は嗜む程度の飲み方に、本多の恋人は視線だけ送っていた。

「・・・あ、そうだ、松浦。今度、鞄を買い替えたいんだけど、秋の新作とか、もうあるかな?」

「・・・ああ。もう出てるが、どんな感じがいいんだ?」

「そうだな・・・、使いやすいのがいいけど・・・。松浦は、何か欲しい物とかある?」

内心ドキドキで話を振れば、悩む顔が唇を緩ませる。

「・・・携帯だな。そろそろ買い替えたい」

「携帯・・・か。奇遇だな。私も、そろそろ買い替えたいと思ってる」

思った成果が得られないまま、自分の恋人が話に加わる。

そして携帯を取り出し机に置くと、品の良いストラップが顔を見せた。

「・・・これは、ブランドですか?」

「ああ。揃いが欲しいと、克哉に言われてな」

「それで、ポンッと買って来られて、ビックリしましたよ。オレが考えてた値段と、桁違いだから」

「当たり前だろ。安物を、君にプレゼントできるか」

そう言われたら、怒る気も失せるというモノだ。

オレも携帯を取り出し、御堂さんの隣に並べる。

デザインも凝っていて、見た目だけでは揃いとは分からず、けれどお揃いのストラップが二つ。

「まぁ・・・。嬉しかったですけど、本当は一緒に探したかったです」

「それは、次の機会にしたらいい」

揺らめく紅色が、口元を緩める御仁に摂取されていく。

それを尻目に、松浦が小さく羨ましいなと呟いたのは、オレの親友しか知らない。

そうして、お開きになった食事会の数日後。

親友からの一本の電話をソファーの上で取ると、隣で恋人が聞き耳を立てる。

『聞いてくれよ!克哉!プレゼント買ったのに、突き返された!!』

「あ、そう。ちなみに、何を買ったんだ?」

聞き耳を立てずとも聞こえた答えに、やっぱコイツはダメだなと思わせた。

『揃いの、Tシャツ』

「「・・・センスないだろ、お前」」

『いやいやいや、ブランドだぜ!?高かったんだぞ!?』

「「無駄金使用、ご苦労さん」」

プチッと通話を切って、Tシャツのペアルックだけは無いなと、恋人と二人で苦笑を漏らした。




白夜さんの『まつーら生誕企画』として、リクエストさせて頂きました!
結局、御克ありきをリクエストしてしまうのが、悲しい性です(けど反省なし)
御堂さんがセンスの良い方で、ノマ良かったね〜♪という話をしたのは、本多には内緒です(笑)

白夜さん、今回も楽しい企画に参加させて頂き、ありがとうござました!!
そして相変わらず、私得なリクエストに素晴らしい形で応えて頂き、本当にありがとうございました!!
大切にさせて頂きます!!(>▽<)


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