君には、いつも、誠実でありたい。

貴方には、いつも、まっすぐでいたい。

バカだなって嗤われてもいい。

そんな貌さえ、この心を満たしてくれるから。


ブラックベリー・リリー


「・・・あ・・・たか、のり・・・さん・・・?」

「克哉?起きたのか。まだ夜中だ。もう少し眠っていろ」

「ん・・・」

柔らかに髪を梳かれれば、開いた瞼が、また重みを増してくる。
それに抗って、弱々しく伸ばした手を優しく握ってくれるのは、誰よりも愛しい人。
月明かりが零れるベッドの上で、大事そうに互いの手を包み合う。
偽りのない温もりが再び眠りへと誘うが、克哉は、このままただ眠りに落ちたくはなかった。
握った手に指を絡ませて、広い胸に鼻をすり寄せる。
昼間にはなかなか見ることの出来ない恋人の甘えた仕草に、御堂の眼は、何時にも増して穏やかになった。

「孝典さん・・・」

瞼を閉じ、恋人に身体を預けたままでその名を呼べば、すぐに返事が返ってくる。
仕事の時には聴くことの出来ない、自分だけが知っている声音。
その声を聴くだけで、身体から余計な力が抜けるのが分かる。
そしてそれが、自分の名だけを呼ぶと思うと、身体に熱が生まれるのを自覚した。
熱に浮かされ、うわ言の様に愛する名を呼び、それでも足りないと言う様に、指をさらに強く絡める。

「克哉」

髪に掛かった息にさえ、全身が疼いた。
さっきまで、数え切れない程の熱を受けたというのに、この欲は、止まる所を知らないのか。
こんな自分が恥ずかしいと言えば、きっとまた御堂に怒られる。
だから、心の中だけで、ごめんなさいと呟いた。
けれどそんな事さえ、この恋人にはお見通しのようで、かすかな微笑みが降り注ぐ。

「また、お得意の悩み事か?」

「悩み・・・ってほどの事じゃ・・・」

「君は、とても正直だが、とても嘘吐きだな」

「え・・・?」

謎掛けのような言葉に、克哉は首を捻る。
御堂は、何故か楽しそうに克哉の顔を見つめるだけで、その真意を話そうとはしない。
意地悪な恋人に視線だけで抗議すれば、なおも御堂は愉しげに笑うばかり。

「孝典さん」

「フッ。そんな顔をするな。・・・君は、そのままで良い。だが、そうだな・・・こんな時は、もう少し素直になった方が良い」

「こんな時?って・・・ひゃあ!?」

「どうする?克哉。このまま眠るか?」

「あ・・・、このまま、なんて・・・」

眠れる訳がない。
御堂は知っていて、こんな事を言っているのだ。

「私がさっき言った事を、もう忘れたのか?」

「・・・・・。・・・孝典さん・・・」

「何だ?」

「・・・オレと、ずっと一緒にいてください」

「・・・・・」

「・・・・?」

「クッ。フフッ」

「え?え?な、なんですか?」

「いや。君は本当に、いつも私の想像に及ばない事をしてくれるな」

「それって、どういう・・・」

「君は、いつまでも、そのままでいれば良い」

額に唇を落とされ、柔らかな微笑を向けられれば、それ以上は何も言えない。
けれど、一番伝えたい事は、きっとこの人には伝わってる。

だから

「孝典さん」

愛しています。




見事に、ヤマ無しオチ無しイミ無しの話になりました^^;
ので、こちらに投下。
もっとちゃんと膨らませて、練り込んで、書き直しをしたいな〜とも思っています・・・。


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