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テンペストに祈るなら



『我々は夢と同じ物で作られており、
我々の儚い命は眠りと共に終わる』



「んあ? それ…テンペスト? シェイクスピアの」
「そう。第4幕第1場、プロスペローの台詞」
「好きだねェ、そういうの」
「ふふ、うん」


方舟の中、アレン達がやってくるのをティキと唯、ロードは食事が並ぶテーブルの前に座って待っていた。
和やかな雰囲気が漂っていたが、それも慌ただしい足音で途切れてしまった。ロードは素早くアレンと元まで飛んで行きその唇にちゅう、と可愛らしい口付けをした。


「ま、ロードってばおませさんっ!」
「えへへ〜っ、唯にもしてあげようかぁ〜?」
「ダメだ、いくらロードでも唯はあげねェよ」
「ティッキー独占欲つよぉい」

ケラケラと笑う唯達に、戸惑いの声を上げたのはエクソシスト。信じられないとでも言いだけなその目は、明らかに唯を見つめている。


「うそ…どうして唯がここに…? 行方不明じゃ……」
「ん? …ふふ、大きくなったねぇリナリー。髪が短くなってる…長い方が似合ってたよ? ね、ティキ、ロード」
「さあ、オレは興味ねェからなー」
「でもぉ、短い方も可愛くなぁい? 僕はどっちも好きだよ。それよりぃ、僕とリナリー…どっちがかわいい?」
「そんなの、ロードに決まってるでしょう? 可愛いロード」


ちゅ、とロードの額にキスをする唯に満足したように笑顔になるロードを見たティキは、ジトリと嫉妬の目でロードを見やる。その時に得意気にティキを見返していたロードを、唯は幸い見ていなかった。


「っ…なに、してるんさ……笑えねぇ冗談やめろよ!!」
「ラビはブックマンっぽくなくなったねぇ。良いのか悪いのか…ブックマンに知られたら怒られちゃうよ?」


クスクスと困ったように笑う唯。そんな中、会話に入るに入れなかったアレンが恐る恐るリナリー達に問いかけた。


「あの…二人ともあの人を知っているんですか?」
「…唯は、エクソシストなの」
「もう少しで元帥ってとこまでいった奴さ」
「やだ、シンクロ率はもう100超えてたよう。元帥にはなりたくなかったからね、ちょっとノアの能力使ってヘブラスカと大元帥達にちょちょっと、ね」


ナイフとフォークを皿の上に置き、ナプキンで口元を拭く。ガタリと立ち上がった音にロードが扉を出した。


「はぁい、唯は先に退出ねぇ〜」
「もう、私も戦いたいってあんなにお願いしたのに…千年公は私を信頼して下さってないのかしら?」
「怪我して欲しくないんだよぉ。僕も、ティキも、千年公も、みんなみぃーんな。例えそれがかすり傷でも…分かって? 唯…」
「ふふ、分かってる。困らすようなこと言ってごめんなさい。二人もあまり大きな怪我はしないでね」


ふわりとスカートの裾を靡かせ、アレン達に向かいなおる。目に涙をたっぷり溜めたリナリーを見つけた唯は、また困ったように笑った。


「リナ、貴方は頑張り屋さんだから心配だわ。たまには休む事も大切だよ。コムイも心配のしすぎで倒れちゃう」
「唯が傍に居てよ! どうして、ノアなんかに…」
「私がノアだから、としか言いようがないなぁ…。それにね、もう私イノセンス持ってないの。だから戻っても意味がないんだよ」


ごめんね、と最後に小さく謝ってから唯は扉をくぐった。叫ぶようなリナリーとラビと声を聞きながら。




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