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すきでした



深谷唯。こいつとはもう二年目の付き合いだ。席もそれほど離れたことがないという、あれだ、緑間風に運命なのだよ。…自分で言って引くわ。
とにかく、俺は唯を気に入っている。だからこそ、こいつを苦しめる黄瀬の存在ははっきり言って好きじゃない。


「…で、逃げてきたのかよ」
「あはは。ほら、私って臆病者だからさー。……逃げてきちゃった!」


誘えなかったよと、残念そうに笑う。唯は、今日部活がオフな事を知って黄瀬と帰ろうと誘いに行ったところだ。だが、それも敢え無く失敗に終わる……いや、そもそも話すらしていないらしい。
何故か、なんてすぐにわかる。二軍のマネと話してたんだろう。そんな姿を見るのは俺に限ったことじゃない。テツやさつき、紫原たちも見るそうだ。


「私ね、こんなにも好きだとは思わなかったんだよ」
「そうかよ」
「…うん、そう。だから、だからね――」


その続きを、唯が言うことはなかった。
今思えば、この時に決心したんだろう。黄瀬と別れることを。

結果、唯は黄瀬と別れてから、どこかスッキリした顔をしていた。たまに黄瀬の姿が視界に入れば、少しは意識してしまうらしいがそれでもすぐにその意識を外すのだとか。


「あー、どこかに私を丸ごと愛してくれる人はいないものかね!」


自棄になり、投げやりに吐いたのは、こいつの本音。やっと零した本音に、俺はくっと口角を釣り上げた。


「なら、お前の丸ごと愛してやるから、俺と付き合え」


俺の一世一代の告白は、ものの見事に唯を驚かせた。その後がどうなったかなんて、俺のこの機嫌でわかるだろ?





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