互いに好きなものが一致したことはあまりない。
覚えてる限りでは、サッカーと"夜"くらいしかない。ふと思い立ってメールで鬼道ちゃんを呼び出して、夜中に近所の海辺へ行ったことがある。砂の上に並んで座って、陽が上るまで空を見上げていた。鬼道ちゃんは自分から話すことは無かった。俺が一方的に話題を振って、鬼道ちゃんはその全てに律儀に答えてくれた。
あの長い時間が俺には特別に感じられた。隣に居た憂いを含んだ顔ばかり見せる奴が、どう思っていたかなんて予測は出来ない。

高校を卒業する前。さして進学したいとも思っていなかった俺は、鬼道ちゃんが行く予定である大学の近くの専門学校への道を考えた。決めたのは、ただの気まぐれだ。無論、鬼道ちゃんは、俺が何処へ行こうが興味も向けないんだろうと思っていた。
しかし、当の本人からの反応は、実に面白いものだった。

「ならば一緒に暮らそうか」

嬉しかった。鬼道ちゃんが、俺なんかのことを気にかけてくれるなんて。
でも変に優しくされた俺は逃げた。気持ち悪いこと言ってんじゃねーよ。そう言った。
つまり、鬼道ちゃんと俺は、そんな関係だった。

(けど、あの時の鬼道ちゃんの顔は忘れていない)


「さみぃなぁ」

真夜中のコンビニ帰りの夜空は、しんと静まり返っている。綺麗だが、気味が悪い。この感覚を、俺は知っている。

(あの頃の、鬼道ちゃんだ)

目を閉じたら、隣に誰かが居る気がした。
高校時代の俺と鬼道ちゃんが、浮かんでは沈んだ。このまま眼球と瞼が融解して、ずっと一緒に居れたら良いのに。




………………
きどふど高校時代は、なんだかんだで隣に居れば良いよ。互いに安心しあえば良いよ。互いに信頼してるのにどこか不安だと良いよ。



10.11.27



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