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▼ ドキッ☆からくりだらけの戦国時代〜ポロリもあるよ〜

まずは状況把握からしようと思う。
女子大生である私こと苗字名前は、今日も今日とてパソコンとにらめっこしてプログラム作成、その後回路図とにらめっこしてロボットの作成を行い、動作確認後帰宅、夕飯を食べシャワーを浴び、レポート作成の途中で寝オチしてしまった…はず。
だがしかし、今私がいるのは真昼間の広場。目の前に巨大な木製のオブジェ。荒々しい顔がこちら…正確には私の上方を睨んでいる。足は六本、車輪のようなものが付いており、どうやら可動式らしい。一体こんな巨大なものを誰が動かせるというのか。巨体のてっぺんには船のような飾りが付いている。よくよく見れば、船に標札のようなものが…やけに達筆だ、読めない。
もっとよく見ようと近付く。
長い…長、曾…?
見慣れない文字が見えた気がして、眉間にシワを寄せてなんとか解読しようとする。そういえば眼鏡どこ行った。
ポケットをまさぐりつつ、オブジェをじろじろ見詰めていると、がこん、と音がした。
え。
目の前のオブジェが、ひとりでに立ち上がった。口がガバリと開いて、目がギラリと光って、長い足を伸ばすと、その巨体が持ち上がる。再び足を曲げ、丸っこい姿勢になると、それは徐々に背を向ける。段々速度が上がり、気付けば有り得ないほど高速で回転していた。こんなでかいのにどうしたらこんな速く回れるんだ。
え、ていうかなんで動いてるのコレ?電気でも走ってるの?ガソリンでも燃焼してるの?
…一瞬、プロペラみたいなネジみたいなのが見えたのは気のせいだと思いたい。
思考回路はショート寸前。悠長に考えを巡らせていたけれど、この高速回転オブジェは徐々に私の方へ向かってきている。吹き飛ばされる。もしくは圧死。
なんで、なにがどうなってこうなった。

がづん。

それが音だったのか衝撃だったのかはよく分からない。私のものではない力が私の体に掛かり、それに押されるまま宙に浮いた。奇妙な浮遊感に襲われ、お腹の辺りがひゅっとする。けれどそれも直ぐに終わり、地面に着く衝撃を感じた。
が、私の体は相変わらず浮いたまま。ただ、お腹を中心に圧迫感がある。
「暁丸を止めやがれ!!」
すごく荒々しい男の人の声が直ぐ近くでした。
するとまた物々しい音を立ててあのオブジェが止まる。
それから、腰に回っていた固いものが緩み、私の足がやっと地面に着いた。
「よう嬢ちゃん、怪我はねぇか?」
私を見下ろす大男。
銀髪なんて初めて目にした。それだけじゃない、左目を覆う大きな眼帯とか、ごつい鎧とか、ポロリってレベルじゃない程さらけ出された上半身とか。
なにこれ。ここ日本?さっきの日本語だよね?
ぽかんとしたままの私を不審に思ったのか、顔の前で手をひらひらしてくるお兄さん。
「ハッ…いやあの、怪我はないです、ハイ」
「ならよかった。…アンタ、ここらでは見ねぇ顔だが、ここが何処だか分かってんのか?」
「いやあんまり分かってないです色々と?」
私の返答がそんなに変だったのだろうか、お兄さんは益々難しい顔をして、私を上から下までじっくり眺める。
「なんか変だなアンタ…それに妙な格好だ。どこぞの忍かァ?」
私にしてみりゃお兄さんの方がよっぽど変な格好だけどな!
「しのびって…何」
「…忍を知らねぇたぁ、冗談にしか聞こえねぇが…アンタからは殺気が感じられねぇ」
殺気を感じ取れるとかお兄さんどんな職業なんだ。
「それに敵の親玉に助けられるなんて間抜けな忍はいやしねぇだろうしな」
親玉…つまりこのお兄さんはなんかしら危ない集団のボスらしい。
ところで前述した通り、私は女子大生である。所属学部は工学部。機械いじりが好きだからだ。
そんな私の中には先程からむくむくと膨らむ好奇心があった。
「ところでお兄さん」
「アン?」
「あのでっかいやつはお兄さん達が作ったんですか?」
「暁丸のことか?なんだ、アンタからくりに興味あんのか?アレは俺達長曾我部軍のからくり兵器よ!まだ作成途中だが、完成版は今より数倍強ぇはずだぜ?」
「からくり…兵器とな」
おうよ!とキラキラした笑顔を向けるお兄さんは、よっぽどからくりが好きなんだろう。
「…と、これ以上は話す訳にゃいかねぇな。アンタが何者か分からねぇ限りはな」
笑顔を引っ込め真面目くさった顔で再びじろじろ見てくる。
「…分かりました。私のことなら信じてくれないかもですが、分かる範囲でお話しします。だから!!」
カッと目を見開く。ちょっと驚いて身を引くお兄さん。
「私にからくりの構造を教えて下さい!!」
「…お、おぉ?」
「めちゃくちゃ気になるんだって!あんな木を組み合わせただけみたいなやつがなんで滑らかに動くのか!遠隔操作?!中に人が入るの?!対称の追尾システムとか!!凄く気になる…!」
興奮気味に早口でまくし立てると、お兄さんが遠い目をし始めた。
「あー、悪いがこいつの作り方はうちだけの秘密でな。アンタが長曾我部軍に入るってんなら別だが…」
「軍?!お兄さんは軍人さんなんですか?!」
お兄さん率いる武装集団はどこぞの軍隊だったのか。
「おいおい、俺の名を知らねぇなんて言うなよ?俺こそが西海の鬼、長曾我部元親よ!」
「すいません知りません!ってか長曾我部元親って戦国武将とおんなじ名前だ!」
「あん?俺がその長曾我部元親だぜ」
「…ええ?」
ちょっと言ってる意味がよく分からずぽかんとしていると、お兄さんもじっくり話したくなったようで、砦のようなところの中へ入れてくれ、その後長々とお互いの情報交換をした。
どうにもここは設定が超次元な戦国時代らしく(徳川家康と石田三成がいがみ合ってる時に毛利元就が生きてる!)、からくり銃火器なんでもござれだそうだ。
お兄さんは長曾我部元親。荒くれ者を纏める海賊の長で、野郎共からアニキと慕われている…らしい。
衝撃的な事だったけれど長曾我部のお兄さんが私の話を信じてくれたので、私も全て受け止めると決めた。
それでとりあえず一段落したのだが、何と言っても私が一番気になるのはからくりで、こんな世界なら果てしなく超次元な造りに違いない!
私のようなひょろっこい女が戦場に出ても直ぐに討死するだろうから、完全裏方として雑用でもなんでもするから長曾我部軍に置いてくれ、なんだったら始終見張りを付けてくれたって構わないから是非からくりの構造を教えてくれと頼み込んだら、やや圧され気味の長曾我部のお兄さんは爽やかな笑みでOKしてくれた。
ここから始まる、私の新しいからくり人生!






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トリップ女子大生とアニキ。
からくり話でアニキと盛り上がれそう。
2012.2.21


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