小説 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ 覚醒サンデー

何が起こったのかよく分からないが、分かる範囲で説明しようと思う。
大阪城へ攻め入っていたはずの大友軍による中国急襲の報を受け、冷静に陣を展開なされた元就様は、今回私には一番駆けではなく後方にて元就様の守護を命じなさった。
流石は九州でも名を馳せる大友軍、特に立花宗茂の活躍は、敵ながら見惚れる程のものであり、あっという間に陣形は崩れ、妙な乗り物に乗った敵方の総大将、大友宗麟が最後の陣地を占領してしまった。
「我が頭上の大鏡を奪するか…!」
と元就様が怒りを表わになさっていたのを覚えている。その時既に元就様はどこか具合が悪いようだったが、私がそれについて尋ねることも出来る筈なく、立花を相手取っている間も、大友の妙な歌に元就様は苦しんでいるかのように見えて、そして。
どうしてこうなった。

私の目の前には穏やかな微笑みを湛える元就様。隣には大友。
元就様がゆっくりと輪刀を振り上げると、大鏡が空の一点を照らし出し、そこに、どこかで一度目にしたような扉が浮かび上がった。光の階段が降りて、元就様は大友と手を取り合って上っていく。
唖然とする私の後ろから、立花が焦ったように主を追い掛ける。
それを見て我に帰った私も、元就様が消えた扉へ走った。


* * *


だから、どうしてこうなった。
ザビー教の信者達が集い、ザビーランドなるものを作ったらしい。それが国なのか島なのか、今の私には分からなかった。ここが何処なのかはしらない。まるで南蛮のような造りの建物が立ち並び、服装も黒い僧服に着せ替えられてしまい、我が主は見知らぬ男の肖像画に向かって何か呟いている。そういえばめっきり日輪を拝む姿を拝見しない。
「も、元就様…」
「おお…ザビー様」
聞いちゃいない。
何事か熱心に呟き、透き通った瞳で絵を見上げる様は、あまり見たくない。
だがしかし私は光栄にも元就様の側近であり、それはこのザビーランドに来てからも変わりはしていないので、こんな妙なところなら尚更何時如何なる時も元就様のお側を離れる訳にはいかないので…
「名前よ」
「は…はい!」
いつの間に祈り(?)を終えたのか、元就様がこちらを見ている。表情はない。が、明らかに以前とは違う。言葉にも瞳にもあの冷酷さが消えているのだ。恐ろしい。
「そなたも分かっておろうな…愛の伝導師となりザビー様の愛を伝えるのだ」
「はっ、はぁ…」
愛とかなんとか言われても正直よく分からない。というか主君の口からそんな単語を聞く事になろうとは。
「気の抜けた返答をするでない。分からぬのか?愛とはなんであるかを」
元就様がこちらへ歩いてくる。ゆったりとした足取りは、今までは一歩一歩が確信に満ちたものだったが、今はふわふわして見える。
「わ、私は武人ですから、愛を語ることは少々…」
「ふむ。なれば語らずともよい」
跪く私の前に立った元就様。
意外な言葉に顔を上げた。
瞬間、肩をがっちり掴まれた。
「!?」
体重を掛けられ、あっさりと転がる私に、そのまま元就様が被さ…いやいやいやいや!
「ももも元就様ァッ?!!」
「なんぞ、そなたが語ることが苦手と申したのであろう」
「そそそれが何故こうなるのです!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ私を、元就様が見下ろす。
「…語れぬならば」
とても鬼畜な笑みで。
「実践あるのみぞ」


* * *


「今日も元就様が…私の知る元就様はいったい何処へ行かれたのだろう」
「貴殿も苦労なされているのですね…今日も我が君は…」
「…お互い頑張ろう」
最近では、立花殿が良い愚痴仲間です。






---
なんか話の流れが予定と大分違った(^ー^)
2012.1.6


[ back ]