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▼ 幸村編

とある駅前の噴水。そこに一人の青年がいた。何やらそわそわと時計や身嗜みを確認し、しきりに辺りを見渡している。彼の名は真田幸村。端正な顔立ち、真面目な性格、少し子供っぽい等の要因から、学校では一二の人気を誇る人物だ。
そんな彼が此処で何をしているのか。やがて聞こえた声に、彼は勢い良く顔を向けた。
「さ、真田君…!」
「名前殿!」
名前と呼ばれたのは、幸村と歳の近そうな少女。彼の傍まで駆けて来ると、息を切らしてその顔を見上げた。
「ご、ごめんね遅くなって…」
「い、いや、そのようなことはござらん。某も今来たばかりでござる!」
「そ、そう?」
二人とも不自然な仕種で言葉を交わす。頬をほんのり赤く染め、視線を合わせようとするも、直ぐに逸らしてしまう。
暫く沈黙が続くが、漸く幸村が切り出す。
「では、ま、参りましょうぞ」
それと共にぎこちなく差し出された手。
その手と幸村の顔を交互に見詰め、おろおろする名前。つられて幸村も焦りはじめる。
「すみませぬ!やはりいきなりこれは…」
「あああやっごごごめんちょっとびっくりしただけでっ」
引っ込められようとした手を勢い良く掴む。
その感触と、お互いの体温を感じると、二人は更に赤くなった。
「えええと、どどどどこ行くって?」
「そそそそれは今から案内する故…」
お互いしどろもどろで会話がとてもまどろっこしい。が、急にハッとした幸村が真面目な顔で言う。
「某が案内いたす故、この手を離さずしっかりとついて来て下され!」
その表情があんまりイケメン過ぎて、普段三次元のイケメンに慣れていない名前には刺激が強すぎた。
「は…はい」
返事を返すと幸村が手を引くので、クラクラしながら歩き出す。
前を行く幸村も、耳まで真っ赤になっていた。


「はあぁ…大丈夫かなあの二人」
二人からそう遠くない茂みの中で、佐助が溜息をつく。歩き出した二人の背中を心配そうに見送る。見た目は不審者だが、視線は正に保護者だった。






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みじけ!
2011.12.31


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