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▼ はじめまして

彼の名前は六道骸。整った顔立ちに特徴的なヘアスタイル、赤と青のオッドアイ。ついでにモデル顔負けの体つき。そんな人目を引く容姿をしていながら、彼は誰の視線を受けることなく散歩していた。
真夏日が容赦なく照り付け、うだるような暑さの中、彼は小道を歩く。今は特にすることもないので暇潰しに近くの海にでも行ってみようという魂胆だ。日差しが強いですねと呟きながら暫く歩いていくと、小道が終わり、その後からコンクリートで固められた階段が顔を出した。もう海までたどり着いたらしい。その下に広がっている海岸に目を向けると、彼ははた、と動きを止める。
そこには既に先客がいた。
その少女は、白いワンピースと長い髪を潮風に揺らし、波が届きそうで届かないところに立っていた。ここからは顔がよく見えないが、おそらく視線は水平線の遥か彼方に向いている。どこかはかなげな小さな背中は、少し力を加えただけで壊れてしまいそうだ。
時は昼下がり。彼女は一人だけらしく、それ以外に人影は見えない。ここで彼が降りていき、お互い無言でいるのも気まずいので骸は踵をかえそうとする。突如鋭い風に襲われ、彼は思わず目を細めた。
しかしそのとき、飛ばされてくる砂に紛れて瞳に映った。
少女の体がぐらりと揺れたのが。
――!
倒れる、そう思ったときには、既に体が動いていた。




「………ぁ」
気が付けば、彼は少女を背中から支えていた。大きな瞳を真ん丸にして、驚きを隠せない少女。骸自身、自分の行動に困惑していた。こんな見ず知らずの他人を助けるような真似をするなんて、何時もの彼からは想像出来ない。
固まった骸の腕から体を起こし、少々は恥ずかしそうにした。
「あ、あの…助けてくれて、ありがとうございました」
ペこりと腰を曲げてから、少々が笑う。それと共に彼女の周囲に花が咲く。骸は目を見開いて彼女を見る。
遠目から見たときは頼りなさげだと思っていたのに、今この少女は向日葵のように輝いている。
今まで生きてきて、礼なんて述べられたことは一度も無かったのに。
「どういたしまして」
彼の口からは無意識のうちに言葉が漏れていた。
「…君の名は、何と言うんですか?」
それは、気まぐれの興味のはず。



暑い夏のとある午後。






ーーー
マッハパイナポー最強。
2010.7.12


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