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▼ 元就様と捨て駒ちゃん

そこは合戦の場。辺りを飛び交う声、足音、金属の擦れ合う音、立ち込める煙。
「我こそは毛利軍の一番槍、名前!名のある将は出られよ!この名前が全力を持ってお相手する!」
戦場に響く凛とした声。兵達の視線を集めたのは、長槍を抱える年若い娘。その細腕からは見当もつかないような槍捌きで雑兵どもを蹴散らしていく。真っ直ぐな瞳は美しく、迷い無く進める足は敵兵の進撃を戸惑わせる。
そして、鎧の下から覗く白い肌についつい目線が行ってしまい動きが鈍った兵士達は、ある一人の男に敵味方の関係なく踏み潰されていた。今しがた己の部下の背中に足跡を付けた彼は、何を隠そう毛利元就その人である。
「邪魔ぞ、何を呆けておる」
冷ややかな視線を投げ付けて再び足を進める。我が道を突き進む元就は次々と人の群れを跳ね飛ばし、やがて先程から主君のために人波を切り開こうと奮闘中の名前の元へと差し迫った。
敵将と負けず劣らずの攻防を繰り返していた名前は、もう追い付いてきた元就の姿を捕らえ口を開いた。
「あ、元就さ…ふぎゅっ!!」
しかし彼女も例外なく踏み付けられ、相手取っていた将もいともたやすく吹っ飛ばされていた。元就は一度も名前を見ることなく行ってしまう。そしておそらく数分の間に大将を討ち取ってくるのだろう。
「……」
名前は地面にへばりながら、この扱いに慣れてしまった自身を嘆いていた。






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金吾さん並の扱い。
2011.8.16


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