あやかしあかし | ナノ
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佐助の耳がぴくりと動く。同時に幸村も何かを感じ取ったのか眉を潜めた。
先程まで懸命に抗っていた狐の気配が潜んでしまった。まるで隠されたように。
「佐助っ」
炎の中で名前が呼ぶ。
「名前ちゃん、ちょっと我慢してくんない?毛利の旦那が…潜ったのか?」
「佐助お願い、ちょっと待って」
必死に声を張り上げ、手の平を炎の外へと伸ばす。
そこで漸く名前の意図を汲み取った佐助は、元就の気配がすっかり消えてしまったのもあり、一度炎を消した。
熱さは無かったものの、炎に気圧されていた名前は胸を撫で下ろす。
「名前殿!怪我はござらぬか?」
すかさず駆け寄り心配する幸村に、笑顔で応える。狐に操られている訳でもないらしい。
「…あの狐に何したの?」
佐助の声が冷気を孕む。だが名前は物おじせずに見上げた。
「私、あのひとと仲良くしたいの」
「はぁ?」
思わず素っ頓狂な声を上げた佐助。幸村が焦ったように名前の肩を揺さぶる。
「仲良く…とは。そなたはその体を奪われかけたのですぞ?!」
けれど、名前は無言で首を振るばかり。
妙に頑固な名前の様子に、佐助は盛大な溜め息をついた。
「あのさ名前ちゃん。アンタは毛利の旦那がどれだけ危ない奴か知らないからそんなこと言えるんであって、今の状態でもすげー危険なの」
諭すように丁寧に話すと、名前が佐助を見返す。
「…じゃあ教えて、元就のこと」
渋い顔をする佐助。
「普通の人間はさ、天つ国のことなんて生きてる間は知るはずないんだよ」
「天つ国?」
「人間が天国なんて呼んでるとこ。色んな神様や幻獣が住んでるんだけど…」
言いにくそうに言葉を濁しても、名前はじっと見詰める。そんな彼女についに折れた佐助は、ばりばりと頭を掻きむしる。
「あーもう、話してやるよ!ただしこいつは原則人間が知るはずないことだ。くれぐれも他の奴に喋ったりしないでくれよ?!」
「うん」
簡潔すぎる返事に訝しむ佐助を、幸村が窘める。
「佐助、名前殿は嘘など言わぬ。とても素直な御仁だと、お前も知っておろう」
何か訴えたそうな視線を幸村に寄越すが、諦めたように息を吐いた。
「…そうだね。じゃあ名前ちゃん、大雑把に天界の情勢について話してやるよ」
――天つ国。それは神々の住まう国。八百万の神達が人間の様子を上から眺め、ある時は救い、ある時は戒めていた。
神と呼ばれる者達は、様々な力を持っており、その姿形も全員が異なるが、大きく分けて二つの勢力に別れていた。
一つは、人間と同じ姿をした神達。一つは、様々な動物の姿をした神達。
人間の形は、物を掴む等体を駆使するのに一番適した形とされており、更に、人型の神は生まれたときから神だったことが多く初めから強大で神聖な力を持っている。だが、動物の神は元々地上の生き物だったものが祭られて神に成った者が多く、成り上がりだと人型の神は動物の神達を見下している。
その傾向を良しとしなかったのが、武田信玄だ。
信玄は動物神達を集め、その力を人型の神達に認めさせようとしていた。
信玄は元々の信頼も厚かったので、それに賛同する者は多かった。
しかし、人型は勿論だが、動物神達の中にもそれを良く思わない者がいた。
それは主に、妖から神となった動物達。
彼等は人よりも妖が強く崇められる存在だと考えている為、人間と同じ姿の神々を蔑んでいる。人の姿をすることはあれど、妖は何よりも上位だと。
故に、信玄が上に立つことが許せなかったのだ。
そんな神達は直ぐさま信玄に反発したが、圧倒的な力に歯が立たず、敢え無く引き下がっていった。
だが、毛利元就。彼は違った。
力を隠し、信玄の懐に潜り込み、虎視眈々と機会を伺っていたのだ。
そして先日、ついに牙を剥いた。
油断していた信玄に大きな攻撃を食らわせたものの、流石は強い信仰を保つ神。やがて力を跳ね返された元就はじりじりと追い詰められいった。
天界で逃げ場の無くなった彼は、ついに下界へ逃亡した。
元就は、凍てつく妖の力と輝く神の光を操る。下界と天界を隔てる結界を破る際、彼は光の力を使用した。
最前線で元就を追っていた佐助の視界は、一瞬で白に塗られた。






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長くなるので一旦切ります。
むりやり終わらせた感が…
2012.2.27