あやかしあかし | ナノ
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幸村が我が家にやって来てから多少生活に変化があったとは言え、名前自身に影響はない。今日も相変わらず久美子に「もっと変化を求めなさい!」と怒られ、委員会の作業をしてから一人で帰路に着いた。いつもと同じ帰り道。
のはすだった。


「あの…」
「いーじゃん、君一人なんだろ?」
「高校生?学校ダルいよねー」
軽い感じの男二人組に絡まれてしまった。普段目立つこともしないので、男子と会話することも少なく、名前はどう対処すればいいのか分からなかった。
「待ってる人がいるんで…」
「嘘でしょ?君早足で歩いてたじゃん」
「家帰るとこだったの?俺達送ってくし」
引いてくれそうにない。
あまりにしつこく呼び掛けてくるので振り返ってしまったが、無理に振り切ってしまえばよかった。思わず溜息を漏らす。
こんなとき、久美子がいてくれれば上手く切り抜けられるのに…

「名前殿?」

第三者の声に顔を向ければ、なんと幸村が立っていた。途端に顔をしかめる男達。
「幸村!」
「ゲッ…」
「うぁっマジかよやべっ」
「そちらのお二方は?…名前殿の知り合い、というわけではなさそうですが…」
「あはは〜なんだ彼氏?いたんなら言ってよ〜」
「俺達勘違いしちゃって馬鹿みてーじゃん。じゃ、じゃーねー」
そう言い残して風のように去って言った二人。名前は呆然と眺めていたが、やがて安心したように体の力を抜いた。
「はぁ…怖かった」
膝が折れてよろけるのを、慌てて支える幸村。
「大丈夫でござるか?!もしや何かされたのでは」
「ううん、なんだか安心しちゃって。ありがとう幸村」
「礼には及びませぬ」
その優しさに頬を緩める。
と、パッと体を離された。今の今まで肩を支えられたままだったのだ。
幸村の頬が赤く色付いている。
加えて口をもごもごと動かしているが、小さな声でよく聞き取れなかった。
「彼氏などと…破廉恥な」
「?」
しかし、何故幸村がここにいるのだろう。確かに家にいることを強制している訳ではないので、自由に外出してくれても構わないが、大抵彼は家に篭っているようだった。
「幸村はどうしてここに?」
率直に疑問を口にすれば、幸村は相変わらずの表情のまま、ちらと名前を見た。
「…心配、したのだ」
「え?」
「いつもより帰りが遅く、何かあったのではないかと、心配いたした」
来てみれば、男に絡まれる名前の姿。
幸村が顔を歪める。
「…ごめんね。心配かけちゃって」
「最近、ここらは物騒でござる。今度からは某が迎えに参りましょう」
「…じゃあ、お願いします」
幸村は、腕のこともあってかもしれないが、名前に過保護だ。それが幸村自身の性格故か、相手が名前だからかは分からない。けれど、好きにさせようと思った。彼の気が済むまで、このままで。
そして、腕の傷が癒える頃には幸村は――
「名前殿?」
「…え?あ、ごめん。ぼうっとして」
「…きっと疲れたのであろう。早く帰りましょうぞ」
「…うん」
幸村の背中が、いつか来る別れの日を見せるようだった。



2012.1.26