「僕、兄さんが大嫌い」 ため息をつくような感じで、雪男が零した言葉が 頭 か ら 離 れ な く て 「兄さん、今日は炒飯なの?」 雪男が俺の服の裾を少しだけ摘んで、弾むような声で問い掛けてくる。 「そうだけど…お前そんなに炒飯好きだったっけ?」 俺の脳ミソにはそんな記憶はないんだけど。んん?と首を傾げるとつられるようにして雪男も首を傾げた。…かわいい。 「兄さんの作る料理は全部好きだよ?」 言うこともかわいかった。嬉しくてつい頬が緩みそうになる。 「…あ、ありがと」 顔を見られないようにフライパンに向き直る。それでも照れたのがばれてるのだろう、雪男がくすくすと笑った。 「馬鹿じゃないの?」 「っ!」 するりと俺の耳に侵入してきた雪男の冷たい嘲りの言葉に、俺は勢いよく振り返った。 「、兄さん?」 でもそこには穏やかに笑っていた雪男しかいなくて、俺が急に振り返ったから不思議そうな顔をした。 「…いや、なんでもねえ」 「そう?あ、僕トイレに行ってくるね」 「あ、あぁ…」 トイレに向かう雪男を見送る。 廊下の向こうに消えたのを見てから、俺は台所の床にしゃがみこんだ。 時々、幻聴が聞こえる。 俺を罵る雪男の声が聞こえる。 雪男が居ない時に聞こえるならまだ良い。 聞こえるのは、いつも雪男が居る時だ。 だから本当に雪男に言われた気がして、でも雪男の唇はそんなふうに動いてないし、さっきみたいに俺が驚くと不思議そうな顔をしたりして、 あああもう、わけがわからなくなる 俺は俺のせいで雪男に辛い思いをさせているから、それに負い目を感じてる。そのせいでこんな幻聴が聞こえるんだろう。もしくは悪魔の仕業だろう。 そう、信じたい。 → |