「おう、おはよう!」 「もう行くの?」 「今日は朝からメフィストに呼び出されてんだよ……朝飯一緒に食えなくてごめんな?」 「ううん大丈夫だよ」 とうさんは『きしだん』ではたらいている。いつもはいっしょにあさごはんをたべるのだけど、たまに早くいえを出るときがある。 さみしいけれど、しかたない。 「ほんとか?」 「もう小学2年生だよ、ぼく」 「そうか…もう小学2年生なんだよな」 とうさんが目をほそくしてほほえむ。とてもとてもやさしいほほえみ。あまえたくなる。けど、がまん。 「とうさん、しごといかなくていいの?」 「おおうそうだった!じゃ、いってくるな!」 「いってらっしゃーい」 ばたばた、ばたん。 げんかんのドアがしまる音をきいてから、ぼくはあさごはんをたべるためにキッチンに足をむけた。 ぼくがこのいえにきたのは、3さいのとき。らしい。おぼえてない。いつのまにかここにいたきがする。 ぼくのほんとうのとうさんとかあさんはしんでしまって、ぼくはかあさんのともだちの『ふじもとしろう』という男の人にひきとられた。その『ふじもとしろう』が、いまのとうさんだ。 とうさんはやさしくて、あたたかい。ぼくがいけないことをしたときは、ちゃんとしかってくれる。ほんとうは、この人がぼくのほんとうのとうさんなんじゃないだろうか、とおもう。 ぼくはとてもしあわせなこどもなんだろう ちはつながってないけどだいすきなとうさんがいて だれにもないしょだけどにいさんもいる ともだちはいないけど、さみしくない ぼくはしあわせだ ← |