古市を東条に取られた。

それはなんていうか、子供のころ大事にしていた玩具を他の奴に取られた感じと同じだった。

悔しい。許せない。

古市は俺だけのものだったのに。

「お、俺、東条さんと付き合うことになった」

頬を赤く染めてそう告げた古市を、心底殺してやりたいと思った。

嘘だと言ってほしい
嘘だと言ってくれ


どうしてなんだ


「今日は東条さんと帰るから」

「次の土曜、東条さんとデートなんだ」

「ごめん、東条さんと電話してて…」

「東条さんからメール返ってこないんだけど」

「昨日コンビニ行ったらたまたま東条さんに会ったんだ!」

「どうしよう東条さんがうちに泊まりにくるって」

「なあ、東条さん見なかった?」


最近の古市は東条東条って、あいつのことばっか。

どんだけあいつのこと好きなんだよ。


「くそっ…」

うざくて仕方ない。







「ぅ、ぐはっ」

「もうやめ…っうわぁああ!」

そのうち俺は腹いせに人を殴るようになった。
前は売られた喧嘩を買うだけだったけど。
今は自分から売りに行く。

「あー…うぜえ」

きっと前なら、古市が止めてくれた。

なにばかなことしてんだよ、お前最低だぞ。なんて言ってくれた。

でも今はその古市が傍にいない。

今ごろ東条と仲良くしてるんだろう。

そう、古市の傍には東条がいるから、俺が古市を守る必要もなくなった。


「…ふる、いち」


あれ?


それじゃあ、

俺は、もう


古市にとって必要のない存在、?





「ぅ、あ、あ、あああ、うああああああああ!」










「ふるいち、ふるいち、ふるいち…」

なんで。

なんで俺の傍にいない。

どうしたら戻ってくるんだ。

東条がいなくなれば、戻ってくるかな。

なあ、古市。





「あれ、男鹿じゃねえか。どうし…」

「頼む東条、死んでくれ」

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