夜中、仕事が終わって家に帰ると明らかに玄関のドアが歪んでいた。

『きっと俺の知らないうちに凶暴で激烈な嵐がやってきてそれに吹き飛ばされた自販機が俺の家の玄関に偶々当たっちゃったんだな全くもう★』という妄想さんの助け船に乗って現実さんから逃げたかったが理性さんが『もう起こってしまったんだから仕方がない、諦めろ』と俺の手を掴んで放さないので言う通り諦めた。

とか考えて時間稼ぎをして、でももう本当に仕方がない、初めてじゃないんだからと自分に言い聞かせ、その原形すら留めていないドアノブに手をかけた。

「……うん、まあ、回んないわな…」













「遅ぇ」
開口一番シズちゃんはそう言った。
「遅いも何も、約束とかしてないし、っつーかシズちゃんが来てるなんて知らなかったし」
「今何時だと思ってんだよ」
「午前2時」
「遅ぇ」
「…はあ」
面倒臭い。
この男はどうしてこうなんだろうか。
「こっちこいよ」
シズちゃんが手招きをする。
おいこいつなんでこんな偉そうなの。ここどこだと思ってるの。
…え、俺の家だよね?
「早く」
「はいはい」
コートを脱ぎ捨てソファーに座ってるシズちゃんの前まで行く。
「っん…」
腕を引っ張られ、噛み付くようなキスをされる。
相変わらず獣のような行為をする。いや、獣か。
「早く食わせろ」
こんな飢えた目で真っ直ぐ見つめられちゃ逃げられない。
「いいよ」

なんかもう、全てが馬鹿らしい。




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