どうして俺はいつだってこうして、

「手前なんて死ねばいい」

嘘を吐くことしかできないんだろう。









「そりゃ、まあ、静雄だし」

すんません意味わかんないです。

『いつか言える日が来る』

そのいつかっつーのはいつなんだ?

「静雄はさぁ、いつになったらアイツに『好き』って言えるんだろうねぇ」

本当だよ、ちくしょう。


あーあー、だめだ。
誰に聞いたって、自分に聞いたって
答えは出ない。











好きだ。
その気持ちに気付いた時にはもう遅かった。
好きという気持ちがどんどん溢れてきて、不器用な俺にはそれを止める術が分からず。
そのうち限界が来てしまう気がして怖い――

――なんて、目に見えないものに怯えてる俺は端から見たらおかしく見えるかもしれない。

でも、本当のことなんだ。

まあ限界が来たとして、その先はどうなるのか分からないが。

俺は彼に想いを告げることは出来ない。

何故かって?

そりゃあ俺が…臆病者、だからだ…。



いや、だって、な?考えてもみろ。

今まで散々憎しみあって殺しあって嫌い嫌い死ね言ってたのに……な?

いきなり『好き』なんてありえねえ。いやありえちゃったんだがな。









「ちょっと静雄!何する気!?」

聞き慣れた闇医者の声にはっとする。

「あ?……うおおう!」

やばいやばい。花瓶を頭に叩きつけようとしていた。いつのまに。

「全く…」

わざとらしくため息をつく新羅。
悪いのは俺だとわかっているが、なんかムカついた。

「とりあえずその花瓶置いてよ」

俺の考えてることがわかったのか、新羅が花瓶を指差す。
仕方ないな。

「ここでいいのか?」

「うん」

花瓶を元の場所に戻して、そういえばセルティがいないなあと思いつつソファーにダイブする。
お?なんだこのソファー、気持ち良いな。
なんか眠く「そこで寝ないでね」

…ちっ。









半ば新羅に追い出される形で家路に着く。
幽に無理矢理持たされた使い方のいまいちわからない携帯を取り出して時間を確かめる。

「11時か」

結構遅い時間だ。
でもこのまま真っ直ぐ家に帰りたい気分じゃない。

それに、

「あと1時間…」

そう、あと1時間。
日付が変われば俺はまた一つ年を取る。


『今年こそは言いなよ』

帰り際に新羅に言われた言葉を思い出す。

「…言えねえよ…」

言えるわけない。
そんな勇気、ない。

「…コンビニいこ」

こうやって俺はまた逃げ出す。











日付が変わる頃、なんだか店員の視線が痛くなってきたのでコンビニを出ることにした。

適当におにぎりとかプリンとか買って外に出る。

「寒…」

冷たい風が俺の体温を奪い取るように吹き抜けた。
おい今日明日は風も弱く比較的暖かいってテレビで言ってたじゃねーか騙されたちくしょう。

一刻も早く暖を取りたくて早足で家路に着く。

と、前方から見覚えのある影が見えた。

「臨也…?」

思わず立ち止まる。
そんな俺に構わず影はどんどん近づいてきて

「…やあ、シズちゃん…奇遇だね」

いつもみたいに嫌味たらしい笑顔を貼りつけて、俺の前で立ち止まった。

「なんでこんなとこに居るんだよ、臨也」

こちらもいつもの調子で顔をしかめる。

「ちょっと新羅のとこに用があって…っあ!」

不意に臨也が大きな声を出した。
な、何なんだ。いや別にびっくりなんかしてねーぞ。
だがしかし次の臨也の言葉で俺は心底驚かされるのだった。


「シズちゃん今日誕生日?」


「…は?」

今なんつった、こいつ。

「だからぁ、シズちゃん今日誕生日?だよね?」

「…そうだけど」

え、なんで俺の誕生日なんか覚えてんだよ。
ちょっと嬉しくなっちゃったじゃねーか!

「ふーん…そっか…じゃあおめでとうだね」

目を細めてふわりと臨也が笑った。
…は、誰ですかこの人。

いつもと違って邪気のない(ように見える)その笑顔は俺の心拍数を倍近く上げるには十分だった。

「あ、ありがとう…」

なんかもう恥ずかしくなって目を逸らす。
まじなにこれ。


『今年こそは言いなよ』


新羅の言葉がまたも脳裏をよぎった。

今なら言えそうな気がする。

いやでもやっぱ怖い。

だけど、今しかない気が


「臨也、俺──…」










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シズちゃん誕生日おめでとう!



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