臨也が俺を抱くようになったのは確か、高2の春。
どうしてそんな流れになったのかなんてもう覚えちゃいない。
まあその頃の俺らは思春期で多感で尚且つ春だったから、まあ、雰囲気に流されちゃっただけだと思うけど。
いやいつも喧嘩ばっかの俺らの間になんでそんな雰囲気が流れたのかって話だけど、覚えてないんだから仕方がない。
きっとアイツなら覚えてるんだろうけどな。

「シズちゃん…俺煙草嫌いなんだけど」

すっと後ろから手が伸びてきて俺の口から煙草を取り去る。
視界から消えたそれを追うように振り返れば臨也が手際よく煙草を灰皿に押し付けていた。

「あー、もったいない…」

まだ全然残ってたのに。
未練がましく灰皿を見つめていると臨也が不機嫌そうな声で諫めた。

「煙草なんていつでも吸えるでしょ。俺はね、こう見えて忙しいの。だから今は」

そこまで言って臨也は口を閉じた。

今は、なんだよ。

そう聞きたかったけどその前に臨也が首に噛み付いてきて、言葉は意味のない吐息になって空中に消えた。








臨也に抱かれるのは、嫌いじゃない。
あいつは他のやつと違って思いやりもへったくれもないから手加減せずに容赦なく俺に乱暴をする。
人より頑丈に出来ている俺にはそれが丁度良かった。

だから嫌いじゃない。
まるで愛を囁くように放つ「大嫌い」の言葉も。









「シズちゃんってさ、死にたいと思ったことある?」

情事の後、いつも通り意識を飛ばして、何時間眠っていたかは知らないけど、起きた時珍しく傍らに臨也がいた。
そして目が覚めた俺に問い掛けた。

「死にたい?…まあ、ないことはない、な」

死にたいっていうのは、少し違う。
死んだ方が良いんじゃないかって、思ったことは何度もある。言わないけど。

「じゃあ殺されたいと思ったことは?」

今度は殺されたい?
…さっきから臨也の質問の意図が掴めない。いやいつものことだが…。

「殺されたいはないな…」

殺したいならあるけど。

「ふぅん…俺はね、あるよ。殺されたいと思ったこと」

「へえ…」

何が言いたいんだろう。
相変わらず何を考えているのか解らない。
寝起きでよく頭が働いていないせいか、苛つくことはなかった。

「だってさ、」

あ、やばい。また眠くなってきた。
臨也の声が遠く聞こえた。

「君、俺のこと嫌いでしょ?」

すでに半分閉じかかっている俺の目に自嘲の表情を浮かべる臨也が映った。
その顔に爪で触れて俺は訂正する。

「大嫌い、の間違いだろ…」

ぷつり、爪が肌に食い込む。痛みに顔を歪ませる臨也と滲む赤が酷くお似合いだと、脳の隅で思った。

「俺は君を愛してるよ」

暗闇に堕ちる中、放たれた言葉は俺に届かなかった。











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企画サイト「一方通行」様に提出!
こんなんで大丈夫ですかね(´・ω・`)
参加させていただきありがとうございました!


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