昔から、『幸せ』というものがあまり好きでは無かった。 誰か他人が『幸せ』になるのは良い。ただ自分がなるのは厭だった。 だってもし『それ』を手に入れてしまったら、俺の中の何かが消えて、そして忘れてしまうような気がして、恐かったのだ。 何か。それが何なのかは解らないけど、きっとすごく大事なものなのだ。 だから、恐い。 どうしても掴みたくなかった。けれど、 「ゆづる?」 目の前の可愛い恋人が首を傾げる。 「ん、なに?」 「ぼーっとしてたから」 「あぁ、少し考え事。大丈夫気にすんな」 優しく頭をぽんぽんとすると彼女は素直にこくんと頷き、台所に戻っていった。 かなでと結婚して、もう3か月。 俺は今すごく──『幸せ』だ。 いいの、だろうか。 こんなにもあっさり掴んでしまった『幸せ』。 もう恐くなどない。 恐くないことが、恐いのだ。 __________ 解説(・ω・) なんつーか、まあ音無に記憶はありません。 でも幸せな報われた人生を送ったら、あの世界に行けないことを魂が知っている。音無自身は解ってない。 みたいな。 わかりづらくてすんませ← ← |