溢れる涙を拭い、深く頭を下げた彼の両肩をぽんぽんと叩いた。

「もう、行け」と、

お前の思いはちゃんと伝わったから、と、

最後に頭を撫でてやると、彼はもう一度、囁くように

「ありがとう……ございます」

そう言って、ゆっくり頭を上げて、微笑み、消えた。

今まで見た中で、一番安らかな、満ち満ちた微笑みだった。




















僕の作品が展覧会で入賞した。
凄く凄く嬉しかったのだけれど、僕はただの入賞で、兄は最優秀賞。
父がそちらに行くのは当たり前だった。

━━寂しい、な。

なんとなく、泣きたくなった。どうしてだろう。僕らは双子で、何もかも同じだったはずなのに。
歳を重ねるごとに兄は陶芸家としての才を発揮していき、対する僕は全然駄目で、こんなものしか作れなくて。
兄の周りには沢山の人が居るのに、僕は独りで。

どうしてだろう。

零れそうになった涙を堪え、顔を上げる。


「あ…」


僕の作品の前に、男の人が立っていた。
綺麗な夕焼け色の髪をした男の人だった。

━━僕のを、見てくれているのだろうか。

あんな、出来損ないのを。まるで僕のような、

「これ、お前が作ったのか?」

いつの間にか俯いてしまっていたらしい僕の前に彼が立っていた。

「えっ?あ、はい、そうですが…」

慌てて顔を上げ答える。

━━うわあ…

綺麗な、顔立ちの整った人だった。
思わず魅入ってしまうほどに。

「…あれ?」

そこで僕は首を傾げる。
なんでこの人、これを作ったのが僕だと解ったのだろう。兄ならともかく。

「解るさ」

彼の手が僕の頭を撫でる。

「え、」

「頑張ったな」

え、え、と目を白黒させる僕に構わず彼は笑いながら頭を撫で続ける。

そういえば、頭を撫でられるのは初めてだ。

なんだか、凄く嬉しい。

知らない人なのに。
どうしてこんなにも暖かい気持ちになれるのだろう。

「お前は独りなんかじゃないよ」

優しく囁かれたそれに、堪えた涙が溢れそうになるのを僕は防げなかった。




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