騒がしい街の雑踏の中、その歌が、その歌声だけが、耳に届いて、

「……!」

俺は思わず振り返り、その声の主に手を伸ばした。


「奏…!!」


がっと肩を掴み、(少し乱暴気味だったが)こちらに振り向かせる。

輝く銀色の髪に金色の瞳、そしてあの時『ありがとう』と言った━━

「やっと、見つけた…奏…!」

街中だということも気にせず思い切り抱き締める。

が、

腕の中の彼女は無表情のまま首を傾げ、

「あなた、誰?」

それはそれは感情のない声で俺に最悪の質問を投げつけた。

「…え?」

一瞬思考停止しかけた頭をぶんぶんと振る。

「?」

ちょっと待った。

え、どういう事だ?
覚えてない?奏が、俺を?え、いやいや嘘だろ?そんなことは…いや待てよ。
転生後、記憶が残ってたのは俺だけで、奏には残ってなかったとしたら?
…有り得る。十分有り得るぞそれは!
あああなんてこった!
そうだよな、考えてみればそう、覚えてない方が普通だ。当たり前だ。
それなのに俺ってやつは奏もあの世界のことを覚えていると信じて疑わなかった。
アホだ、俺。本当もうアホすぎる。
やべえええええ

「…ふっ」

…ん?
今、笑った?コイツ…そんなに今の俺の様子は可笑しかったろうか。…可笑しかったかも。

「冗談よ」

「は?」

「冗談に決まってるじゃない。私が結弦を忘れるわけないわ」

またも思考停止しかけた俺に、彼女はそう言って微笑んでみせた。まるで天使のような━━





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