庭球番外編 | ナノ

▼ 夢主に仲の良い女の子がいたら

「俺女の子に殺意を抱いたのは初めてかもしれない」
「ジロー落ち着け」

俺の隣でひどい形相をしているジローを横目で見て、視線を前方の女共に向ける。楽しそうに話している姿に俺は何も文句はねえが、コイツはあるらしい。

「跡部つれてきたらあの子は跡部に向くと思ったんだけどなぁ…」
「お前そんな理由で俺様をつれてきたのか」

戻る。とD組から背を向けるがジローに「待って待って」と止められた。ハァ、息がもれる。

どうやらみょうじとすごく仲の良い女友達がいたらしい。なんでもその女友達は病弱でなかなか学校に来れず、今回一週間だけ氷帝学園で過ごし、その後病気回復のために静かな国に越すのだとか。
そりゃ最後の一週間は仲の良い友人と過ごしたいだろう。

「もうダメ…みょうじ不足…」
「お前もか」

みょうじと女友達の近くにいた向日がヨロヨロになりながらこちらへ来た。なんつーか、みょうじのこと大好きだなお前ら。

「マジ女同士の会話って口挟めないっつーか…てかあの女がさぁ、俺がみょうじに話しかけようとすると会話始めんの」

みょうじもみょうじで白玉ぜんざいの話する時と同じテンションだし。とむくれながら壁に背をつけた向日。一足遅れて忍足もやってきた。

「あの子になまえさん取られてしもたなぁ」
「…せっかく侑士つれてきたのに見向きもしなくてよ」
「え、そのために俺呼ばれたん?」
「あー同じ同じー。跡部も忍足もダメだねぇー」
「ジロー、機嫌が悪いのはわかるが俺様を役に立たねえみたいに言うのはやめろ」

ジローまでむくれ始め、忍足が苦笑いでなだめていた。二人の愚痴はまだ続くらしい。

「しかもしかも!俺の方が先にたい焼き食べに行くって約束したのにさっ、あの子が映画観に行きたいっつってなまえあの子の方取ったんだよ!」
「俺だって最近クラスでも全っ然話さねえしよ!あの女と話してばっかで!」
「まぁ確かに最近なまえさんの横には常にあのお嬢さんいるしなぁ…妬いてまうわ」
「忍足…お前まで…」

忍足まで参戦し始めたので、また深い息を吐く。コイツらが誰と仲良くなろうが俺様には関係ねえが、みょうじは俺様とも関わりがあるしコイツらの気持ちもわからないでもない。だが。

「我慢しろよ。みょうじだって同性と交流したい気持ちはあるに決まってるだろ。お前らが依存しすぎると、みょうじの友人をなくすことになるぜ」

まあもう俺様たちテニス部レギュラーにあんなに関わってるんじゃ、そこまで仲の良い女友達はできねえかもしれねえ。だからこそ、今あの女とみょうじが楽しそうならばそれを邪魔するわけにはいかねぇだろう。

言い聞かせるように三人に言えば、三者三様の表情をしていた。

「せやな、なまえさんも俺らに依存しとるやろうし」と忍足。
「それでもなまえ独り占めはずるいCー」とジロー。
「ならやっぱ俺も会話に混ぜてもらうわ」と向日。
かぶった三人の声に、腕を組んで頬をひきつらせた。いやに今日は素直じゃねーのコイツら。まあみょうじ本人が目の前にいねぇからだろうが。

「はいちょっとごめんねどいてー」
「あっなまえ!どーしたの」
「え、トイレだけど」
「はい捕獲ー」
「我慢しぃやなまえさん」
「いや無理無理!無理でしょ普通に!」

三人に捕まったみょうじらがギャアギャア騒ぎ始め、態度の変わりように口角が上がった。
先ほどまでみょうじがいた場所を見ると、みょうじの女友達が微妙な心境の面持ちでこちらを見ていた。悪いな、コイツらまだまだガキなんだ。

「跡部いまめちゃくちゃ悪い顔してたねー」
「アーン?」
「ざまあみろ的な」
「…してねぇよ」




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