庭球番外編 | ナノ

▼ もしも夢主が立海生なら

「だるんだるん?まあ確かに丸井くんのお腹はだるんだるんかもしれないけど」
「てめっ」

丸井くんのお腹に視線を流しつつ、神妙な顔で言えばラリアットを食らわされた。
手加減してるのだろうが、君一応男子!しかもテニス部!さらに全国優勝校!

「なんて暴力的なの…」
「その話題を振ってきたなまえが悪ぃ」
「いや話題を振ったのは真田くんだし…」
「む…声の調子が悪い」
「真田は叫びすぎなんだよ」

朝、クラスから出て丸井くんに遭遇。
「よぅ、眠そうだな」「それが授業中に居眠りしそうになってさー」ハハハ、なんて他愛もない会話をしていたら後ろから「だるんだるん!」と叫ばれて。

振り返ったらのどを抑えてる真田くん。隣に噴き出しそうになってるのをこらえてる幸村さんがいて、冒頭に戻るのだが。

「真田くんものどがおかしくなるのか…何かあったの?」
「うむ、昨日は空気が乾燥してる中、叫びすぎたのかもしれん」
「そーいや赤也に怒鳴ってたな」
「うわーダメだよ真田くん、ちゃんとうがいしなきゃ。ガラガラって声出した方がのど震えると思うよ。で、今日はあまり声出すの止めたがいいよ」
「そうだな。気をつける」
「ぶはっ、みょうじお母さんみたい」

けたけたと美しい顔で笑い始めた幸村さんにじと目を送れば、「俺の母はただ一人だけだ」と真田くんが言う。いやそういうことじゃなくて。

「お母さんっつーかただ口うるせぇだけだろぃ」
「丸井くんには口うるさく言っても聞かないけどな」
「聞いてるぜ、ジャッカルが」
「ジャッカルくんいねえよ」
「呼んだか?」
「来た!」
「さすがジャッカル」
「あ、みょうじ、肩に葉っぱついてるよ」
「急に話題変換したね幸村さん…さっき仁王追いかけてたらあんにゃろ木から大量に葉っぱ落としてきてさ…!」
「だからって木の実を投げて頭に当てるとかやっちゃダメだよ」
「…え…なんで知ってるの幸村さん…いなかったよねあの時…」
「ふふ」

ふふじゃないよ怖いよこの人…!ジリ、と後ずさる私の横でジャッカルくんが「え…俺普通にスルーされてんのか…?」とつぶやいていた。とりあえず肩を叩いといた。丸井くんも叩いていた。

「あー!やっといたなまえ先輩!探したんスよ!」

「あ、赤…」廊下の曲がり角から走ってきた赤也くんに笑顔がこぼれたところで、今まで黙っていた真田くんが大きく息を吸うのがわかった。

「赤也!!廊下は走」
「真田くん」
「…は、走るな…」

叫びの途中で我に返った真田くんは、静かな声に切り替えた。うん、のどは大事にしなきゃ。にしても口元を抑えて震えてる幸村さんは笑いすぎである。

「え…すんません…」真田くんの様子におどおどしながら赤也くんはゆっくり近づいてきた。ある意味効いている。

「どうしたの赤也くん」
「どうしたって…昨日なまえ先輩がマンガ貸してくれるって言ったじゃないっスか。ちゃんと持ってきたんスよねえ?」
「……あっ!」
「ええー!?忘れてたんスかあ!?そりゃないっスよ、俺すっげー楽しみにしてたのに!」
「うわーごめんね赤也くん、お詫びに抱きつかせてください」
「……は!?」
「いやお詫びじゃねえし。バカだろぃなまえ」
「は、ごめん、赤也くんが今までにいない後輩すぎて」
「誰と比べてんだよ」
「ちょ、も、そうやってごまかそうったってそーはいかないんスからね!明日はちゃんと持ってきてくださいよ!」
「なに、マンガを学校に持ってくるなどたるん」
「真田そのツッコミ遅いよ」
「んじゃまた後で!」

タタターと真田くんに怒られる前に急いで行った赤也くんに、「そういや俺赤也にジュース代返してもらってねえな」とジャッカルくんが口を開いた。

「ジャッカルくん、飴あげるね。友達にあげたんだけど余っちゃって」
「え、なんだよいきなり…サンキュ」
「なまえ、俺にもよこせ」
「ち」
「こいつ」
「最初からジャッカルにあげるために買った確率82%」
「うわああ柳くん!」
「そうだったのかみょうじ。俺なんかに気を遣って…」
「みょうじはジャッカルが好きなんだね。へえ」
「マジかよぃ。やめとけジャッカル。コイツはお前じゃ無理だ」
「なんでそうなるのかな…!てか柳くん君急に背後に現れないでってあれほど」
「ふ。弦一郎、精市、校長が呼んでいるぞ」
「ああありがとう。じゃあねみょうじ、丸井。…ジャッカルも」
「なんか怖えな…」
「真田くん、気をつけてね」
「うむ。気遣い感謝するぞ」
「なまえ、木の実は当たり所により痛みが走るためあまり人に投げるのはオススメしないぞ。じゃあな」
「いやだから何で柳くんまで知って…!」

偉大なオーラの三人が遠ざかっていく。やっと息ができる気がするよ。はあ、と重い息を吐けば「なまえ、この飴うめぇ」ときた。良かったね丸井くん。そうやって笑ってればアイドルなのにね。お菓子にがっつく姿見ればあれだよね。

「おや、このような所で何をしてるのですか」
「出たな仁王!」
「えっ」
「……」
「……」
「…なんだ柳生くんか。ごめんね」
「…いえ」
「みょうじ、確証もないのに言ってやるなよ」
「だっていつ変装してるかわからないし」
「見破ってやれよぃ」
「テニスの試合にも出すほどの変装が私に見破れるわけないじゃんか…!」
「確かに」
「え、ええと…そういえば真田くんののどが調子悪いようですね。もう会いましたか?」
「さっき会ったぜ」
「丸井くんがだるんだるんて言われたんだよ」
「いやお前だよ」
「みょうじさんはだるんだるんではありませんよ」
「さすが紳士…!」
「わからんぞ。心の中ではその通りだと思ってるかもしれん」
「出たな仁王!」

するり、と柳生くんの肩に手を置いて出現した仁王。この人どっから出てきた。本当に扱いづらい。
「ほ〜れ、このへんを見てみんしゃい」と避ける間もなく両頬をつままれる。

「いひゃいいひゃ」
「や〜らかいの〜ぅ」
「なまえー顔として終わってんぞ」
「仁王くん、やめたまえ!」
「なんじゃ柳生、ほんとは柳生も女子にこーゆーことやりたいんじゃろ」
「マジか柳生」
「そういうキャラだったのか柳生」
「ばっバカなことを!」

やっと離してもらったと思えば、仁王は柳生くんにガミガミと叱られていた。ざまあとはこういうことを言うんだな。
ヒリヒリする頬を抑えた後、柳生くんの話を聞いてるか聞いてないかわからない仁王に手を伸ばした。
思いっきり頬を引っ張ってやると吃驚した表情のヤツと目が合った。ドヤ顔で笑ってやる。

「仕返し」

仕返しのさらに仕返しが怖いので、さっさとそこを後にした。また何かあったら幸村さんか真田くんの背中に隠してもらおう。いや、幸村さんには笑顔で拒否られるかな…。

「お前さぁ」いつの間にか隣を歩いている丸井くんと苦笑いのジャッカルくん。

「あーいうのやんなよ。仁王が調子乗るだろぃ」
「…これ以上調子乗られたら困るんだけどな」

バーカと言いながら、丸井くんはジャッカルくんのポケットから飴を奪っていた。「取りすぎだろ!」って、取るのは良いんだ。やはりジャッカルくんが一番の安心である。




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