立ち入り禁止


 「立ち入り禁止……?」
 いつもの見慣れた景色の中に見慣れない立て看板があった。
 読み上げると、ロープで囲まれた部分のほぼ中央で体育座りをしていた男がじろりとその黄金色の虹彩を向けてきた。
「なんなんですか、これは」
 指差すと男は、触るな! と吠えた。触ってませんよ、と言い返せばむくれた様子で空を見る。することもないので、ロープのこちら側に座って観察してみることにした。
 しばらくして、また日課になっている『あの人』へと想いを馳せる作業を開始した私に殺気が放たれた。
「おい、お前」
 ざらついた声に、せっかくあの人の声を思い出していたのにと残念に思う。
「なんですか」
「そこで淫乱な空気だだ漏れさせんじゃねぇよ」
「淫……仰る意味が解りません」
 また一声吠えて、男は長い爪をこちらに向けた。
「目障りだ」
 別に一緒にいる理由はなかった、と立ち上がる。さてどこに行こう、と足を踏み出そうとしたところで腕を掴まれた。
 振り返って眺める。
 じいっと睨んできた瞳が眇られ、噛み付くような口付けをしてくる。氷のような冷たい舌を差し込まれた。
 今日は一段と意味が解りませんね。
 と素直な感想を述べれば厭な顔をされる。
「テメェ邪魔なんだよ。さっさと消えちまえ」
「……なんで貴方に命令されなければいけないんですか。第一」
 貴方が私の存在を繋ぎ止めている一因だという自覚はお有りですか?
 そんな言葉をかければすごすごとロープの中に戻っていく。
 あれになんの意味が? て思っていると
「これ以上俺の中に侵ってくんじゃねぇ!」
 などと言われた。
 完全な八つ当たりですね。私にはそんなつもりは微塵もありませんから。
 返した私にまた吠えて、男はしゃがみこんだ。





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より、お題「立ち入り禁止」
白崎×黒雨竜で。


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