装飾品

 あ、これ良いな。
 と黒崎が言った。見れば細いシルバーのチェーンを見ていた。
「それのことかい?」
 尋ねれば至極真面目な顔で頷いた。そしてまた、良いなぁ、となぜか熱っぽく呟く。
 ――似合わなさそうだけど。
 そう思ったものの、買ってくれとせびられたわけでもないから黙っている。良いなぁと5回ほど言った後で、黒崎はそれを手に取った。
「君、いつももっといかついの着けているじゃないか。そういうのは趣味じゃないと思ってた」
「あ?」
「例えば、こっちとか」
 つい口を挟んで太めのがっちりした印象のチェーンを指差した僕に、黒崎は呆れ顔で首を振った。
 なんにも解ってねぇな、石田。
 そうしたり顔で言われてイラっとしてしまう。
 何を解っていないと言うんだ。いや、もとより黒崎の事なんて理解しようとも思っていないのだから、解らなくて当然じゃないか。
 黙り込む僕の手をおもむろに掴んで挙げさせた黒崎は手首を差した。
「ほれコレだって」
 僕の手首に巻かれたチェーンを突いて唇を尖らせる。羨ましい、なんて言われた僕は呆れるばかりだ。
「あのね、これはアクセサリーとして着けてるんじゃないよ。滅却師として必要だからこうして…」
「んなことは解ってるよ」
「じゃあなんで。第一に死神代行の君には必要ないものだろう」
 阿呆なんじゃないか、と言った僕に、阿呆はオメーだ、と黒崎は腕を組んだ。
「好きなヤツが持ってる物と似てる物欲しいってのは、恋する人間に共通する欲求だと俺は思っている」
「はぁ??」
 意味が解らない、と眉をひそめた僕をこづいた黒崎は真顔だった。

「なぁ。俺が石田に弟子入りしてさ、滅却師の修行したいって言ったらソレと同じの貰えんのか?」

 絶句して言葉もない。
 だから君は死神代行じゃないのか。
 誰でも修行すれば滅却師になれるとでも思っているのか。
 第一、黒崎一護に滅却師装束は似合わない。壊滅的に似合わないじゃないか。
 突っ込みあぐねて口を開けたままの僕を見て、フン、と鼻から息を吐いた黒崎はなぜか威張っていて、物凄く疲れた僕はその場から早く帰りたくて仕方がなかった。








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より、お題「装飾品」





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