短編 | ナノ

深夜の侵食


「ただいまー」

23時58分
あと2分で日付が変わろうかという時間にやっと帰宅することが出来た。


最近の呪霊の多さには手を焼いている。


私は一応1級術師ではあるけどその中でも下の下といったところだろう。そんな私でも呪霊を祓うため一日に数回、任務を入れられることが多々ある。まさに今日がそうである。


昨日も、その前も一日に2回、3回任務を入れられ、労働基準法違反してるぞって言いたいぐらいだった。人手不足の業界だからそんなこと言ってられないんだけど。


報告書、今やらないとだよなー。
明日はお昼からだから、ギリギリまで寝るとして、1時間で3回分終わらそ。


誰もいない部屋で報告書を黙々と書いているときにスマホの着信音が鳴る。


相手は五条悟


私の同期で呪術界最強の男。


そしていつも仕事が立て込んでいるときに限ってこの男は私に電話をかけてくるのだ。


ちなみに付き合っているわけでもなくただの同期というだけなのだが、眠いし報告書終わってないし、面倒くさい。でも五条悟という男は、私が出るまで着信音を響かせるのだからタチが悪い。


「もしもし?」
「なまえ?お疲れサマンサー!」
「そのテンションムカつく。切っていい?」
「酷くない?」


語尾が一昔前の女子高生のように伸びる五条に更に苛立つ。


「今帰ってきたところなの!眠いし、しんどいの!用がないなら切っていい?さっさと報告書終わらせたい」
「知ってるよ」
「は?」

何を知ってるというのだ。
六眼ってそういうのも視えるんだっけ?いや、そんなことはないはず。


「なまえの勤務は伊地知にいって把握済み」
「なにそれ、怖いんだけど。五条私のストーカー?」
「うーん、似たようなモンかな?」
「え?笑えないよ?」



一瞬真剣な声のトーンになって、背筋が震えた。


「仕事が立て込んでてイライラしてるだろうなまえのために僕が話し相手になってあげようかなって思ってね」
「五条と話す方がイライラするんだけど」
「照れんなよ」
「照れてない」


まぁ、眠気は少し取れてきてるから報告書は何とか全て終わりそう。


あれ?
五条がいつも電話してくる時って報告書もすぐ終わるし、いい質の睡眠がとれているような気がする。


「まぁそれはただの口実だけどね」
「口実?」
「そう、僕がただなまえの声を聞きたいってだけ」
「...っ」
「ふふ、照れてるでしょ」
「て、照れない」


突然甘い声でそんな台詞言うのはズルい。電話越しだから余計にダイレクトに脳にくる。


「本当は毎日声ききたいんだけどね」
「ちょ、五条?」
「ねぇなまえ、僕のために明日から一緒に住まない?」
「はい?」
「あ、お前に拒否権はないよ。明日の午前中には引越し業者くるから。荷物整理しててね」


え?
一緒に住む?
引越し?


「五条!突然すぎて考える時間欲しい!」
「ダメだよ。僕はもう限界なんだから」


いやいや、強引というか強行突破すぎる

「疲れて何も考えられないお前をドロドロに甘やかして僕以外考えられないようにしたいんだよ」



それの言葉をきいて、私は悟った。


あぁ、前からずっと五条悟という人間いう人間にずっと昔から侵食されていたのだと。







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