短編 | ナノ

私のサンタさん


「クリスマスなんて滅びろ」
「なんや、えらい荒れてるやん」
「クリスマスカップルでイチャイチャしながらケーキ買いに来たら殺す」
「ほぉーお前バイトなんか?」
「週末はケーキ屋のね」



明日は12/24、クリスマスイヴ。そして土曜日。聖なる夜の前日。


私は恋だの愛だの無縁の花の女子高生でお金が恋人のため迷わず土日忙しくてもバイト出れますよ!なんて言ったけど、激しく後悔した。


バイト先のケーキ屋の店長さんも花の女子高生が恋人とも遊ばず、ましてや友達ともクリスマスパーティもせず、終日バイトを入れていいなんて言うから驚いただろうな。私もまさか、こうなるなんて思わなかったわ。



「寂しいやつやな」
「侑はバレーが恋人じゃん」
「負け惜しみは寝て言えや。俺はモテんねん。当日は色んな子から声かかってんねんで」
「あ、そう。サイテー」



自分のことをモテるという目の前の相手は宮侑。ここ稲荷崎高校のバレー部の中心メンバーで学校1モテるといっても過言ではないだろう見た目はしてる。中身はくそ残念やけどな。


まぁ、かく言う私もこの自称モテ男の宮侑に淡い恋心を抱いているのは目の前の男は考えもしないだろう。


「冷やかしに行ったるわ」
「まじで来んで」






ーーーーーーー




クリスマスイヴ当日


「店長!」
「みょうじちゃんおはようさん」
「おはようございます、じゃなくて!!」
「偉いにあっとるで」
「ありがとうございます、奥さん···やない!」


クリスマスケーキの準備があるからと早めにバイト先に来てとの事で早めに行き、ロッカーを開けると私用のサンタの衣装が入れられていた。それもズボンではなくスカートの···


いつも着用している仕事服がなく泣く泣く私はサンタの衣装をきるはめになったのだ。


こんな姿知り合いに見られたくない。


と思ったが案外、稲高生に見られることなくあと少しで本日分のケーキが売り切れると思っていたらなにやら聞いた事ある声が聞こえる。


店頭販売をしていたからその声の方へふと視線をうつすと、見慣れた金髪に臙脂色のジャージに白のエナメルバッグ。侑だ。


本当に冷やかしに来たんか、こんな格好見られるのやだなーとかホンマは冷やかしには来ておらず、他のバレー部メンバーと遊びにきただけかもしれんと、頭の中で冷静に考えながら、客を呼び込む。


「あ、侑!みて、サンタさんおるで!この寒い中サンタさんのコスプレしてケーキ売るの大変やなぁ」
「どうせ男やろ、ってか離れろや」
「女の子だよー!あと寒いから離れない!あ!そうだぁ今日親いないんだ、だからケーキ買ってあたしの部屋来ん?」
「行くかボケ。あとケーキは買う」


楽しそうに会話しとんな。まぁ色んな子に声かけられるって言っとたな。ってか親居ないから部屋来ない?ってそういう意味なん?だからカップルはイチャつくなっていってんねん。


というか侑はバレー優先とかいいながら女の子と何しとんの?ありえん。


「すいませーん。1番デカいホールケーキください」
「え、侑そんなに食べるん?」
「お前のじゃないわ。ケーキ買ってこいってサムに言われてんねん」



私に気づかず小ウィンドーを見ながら注文する侑。


「かしこまりましたー。彼女さんとのケーキはどうしますか?」


なんて営業スマイルと言葉を使って侑に話しかける。


「いや、彼女じゃないんで···は?」


彼女じゃないならセフレか??


「お前、何しとんねん!」
「何にって言うたやん、ケーキ売るバイト今日明日するって」
「こない格好して売るなんて聞いてへんぞ!」
「私だって今日知ったわ。というか他のお客様のお並びになっているので早くしていただけませんか



突然大声出して説教じみたこと言わんで欲しい。


「侑、あたしこっちの···」
「自分で買えや···ってか毎回毎回付き纏われてウザイねんお前」
「は···!?最悪!」


侑と一緒にいた人セフレでも彼女でもないんか?


私は侑が注文した品を取り出しお釣りを侑に渡す。


「何時に終わるん?」
「この調子ならあと1時間ぐらいかな」
「なら一旦帰ってまた来るわ。待っといてな」
「は?」


侑は私にはそう言い、ケーキを自宅に持ち帰るべく背を向けて歩き出した。なんなんだアイツ。



あのあと怒涛のお客さんラッシュで残りのケーキは瞬く間に売れた。
クリスマスが稼ぎ時とは本当の事だったんだろう。すごいな、お客さん。夕方だとこうも人がたくさん来んのやな。


「みょうじちゃんお疲れ様ー。はい、これ」
「え」
「さっきの金髪の男の子と一緒に食べや」
「はい??え、ちがっ」
「若いってええなー」


お店から出る時に渡されたのは小さなホールケーキ。侑と食べなといって渡されたのである。いや、私と侑はそういう仲ではない。決して。



ピロン


スマホのメッセージアプリから通知音が聞こえる。
メッセージの主は宮侑。
"終わったか?○○公園おるで"


侑からのメッセージは私と侑の家の近くにある公園。


「侑···」
「おーお疲れさん」


ベンチに座っていた侑の耳は少し赤くなっていて何時から待ってたんやろって、嬉しいなって思っている自分がいて少し笑ってしまう。


「さっきのやつ彼女でもなんでもないからな」
「ふふ、分かってるよ。バレーが恋人やもんな」
「バレーは俺の人生やアホ」
「へぇー侑彼女とか欲しいん?」
「健全な男子高校生舐めんなや、欲しいに決まっとるやろ。バレー優先してくれるやつがええけど」
「そっかー」


そうか侑と健全な男子高校生なのか···。いやそこはどうでもええねん


「あ、そうや!これ。なんかバイト先の店長がな、侑と一緒に食べなって!賄いみたいなもんなけど。食べん?」
「うぉ、めっちゃ美味そうやん!」
「あ、切り分けるもんないからこのまま食べ進める形でええ?」
「···おん」


ケーキと一緒についていたフォークでホールケーキを食べていく。


「なぁ···」
「ん?」
「目ェ瞑ってや」
「なんで?」
「クリームついとるから優しい俺が拭ってやんねん」
「えー」
「はよしろ」


場所さえ言ってくれれば自分で拭うのにと思いながらも私は侑が言った通り目を瞑る。目を瞑るがなかなか侑が私にはついたクリームをとる気配はない。


「あつ···っん」


なかなか拭わない侑に文句を言ってやろうと目を開けようとしたときに感じた唇への柔い感触


驚いて目を開けると百均にでも売ってあるだろうサンタ帽を被って自分の唇を親指で拭いながら真っ直ぐ私を見つめる侑がいた。


「拭ったで」
「いや、あの···」


なにさっきの侑。
ふざけてる時のバレーしてる時の侑じゃない。



侑はケーキを掬い自分の唇につけて、私に近づいてくる。


「ちょっ···ッンン··ぁ」


私の唇にもケーキのクリームがつき、それを侑の舌が舐めとる。


「フッフ···」


侑はしてやったりという顔をして私を見つめる。


「なまえ、クリスマスはカップルがイチャイチャしてるの嫌って言ってたやん」
「言うてたけど侑が私に、そのキスとかする理由がそれに関係あるの!?」
「あるに決まっとるやん」
「はよ理由を言えや」
「お前の願いこの侑サンタが叶えたんねん」
「まて、意味わからん」
「俺らがカップルになればなまえがイライラすることもないやん」



なにをこいつは言ってるんだ。



「なぁなまえは俺の欲しいもん叶えてくれんの?」


侑は私の冷たくなった手を握りながら私の目を見ていう。


「侑の欲しいもんわからんもん」



ここまでしてもらって気づかないほど鈍感ではない。


「なまえ、俺はお前が欲しいねん。付き合ってくれん?」



少し不安そうに言う侑に胸がきゅんとした。でもこいつカップルになる前に私にキスしたよな?結構危な目な!


「侑は私のこと好きなん?」
「付き合ってほしいって言ったやん」
「うぅ、私は侑のこと1年の時から好き。やから侑も好きって言ってくれんと付き合わん···!」
「はぁ···なんなんそれ。可愛すぎやろ」
「っン···」
「むっちゃ好き。あんなサンタの格好したなまえ見てからむちゃくちゃキスしたから今は許してな」
「侑のサンタだからええよ?」


侑は私を抱きしめて先程より激しめのキスをたくさん私にくれるのであった。


戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -