「今日の侑、えらく千聖にくっついとんな」
「そう思ってるなら助けて欲しい、銀ちゃん」
「いや、助けたら俺らが侑にどやされる」
上から銀ちゃんに倫太郎。
そんな薄情な...
朝練中も放課後の練習中も無駄に私に絡んでくる侑に正直どうしたらいいかわからんし、突然のことに私は白旗をあげそうだった。
事の原因の侑は治と一緒に北さんに説教中である。ざまぁみろと心の中で思ったのは内緒である。
「にしても侑。気づいたら一直線すぎでしょ」
「それが侑のいいとこやで」
なんて呑気に喋っている倫太郎と銀ちゃんが本当に腹立たしい。なに?気づいたら一直線って、今朝の侑も似たようなこと言ってたし、そんなんまるで私の事好きみたいやん。それは絶対ありへん。
「そういえば千聖、ラブレター貰ってんでしょ?」
「おお!青春や!」
「青春ならそっちのほうが良かった」
「なんや、どういうことや?」
私は倫太郎と銀ちゃん、ラブレターの内容を事細かに教えた。内容をきいた2人は明らかに顔が引きっつっていた。うん、だろうな。
「侑はそれ知っとるん?」
「内容までは知らんと思うけど、私が怖がってるのは分かるらしい」
「治は?」
「治にはやんわり伝えとる」
少し考えてたいた様子の倫太郎が気になることを言う。
「そのラブレターの相手、ここの生徒なのかな」
「いや、生徒やろ。俺らの試合応援来たって書いとるやから」
「私も生徒だと思う」
生徒以外に誰がいるって言うのだ。
「でも、生徒なら千聖がスクイズ作ってるところや、ビブス干してるところをずっと見てるなら手伝ってる俺ら1年も少しは分かるくない?」
「たしかに...」
倫太郎の言う通りだ。
あのラブレターを貰ってから感じる視線。
視線を感じた方を振り向いたりしてもそこには生徒はいなかった...けど、他に誰かいたような気がする。
「なんの話しとん?」
「侑が付きまとってきてて、ウザいって話やで」
「何がやねん!嬉しいって言え!」
「暑苦しい...」
説教から帰ってきた侑は相変わらずうるさい。また煩くしてたら北さんに怒られてしまうのに。
「駅前に出来たアイスクリーム屋さん行こやー」
「行く!」
「治の反応はや」
部活が終わって私たち1年は駅前のアイスクリーム屋に向かった。そこでは例の視線なんて全く感じなくて、ノンストレスで時間を過ごすことができた。
「じゃ、また明日部活でなー」
「あ、千聖、早く侑の気持ち分かってあげてね」
「なんや、それ。というか、周りから固められてる気がするねんけど」
「完全にそうやろな」
「絶対いやや。治助けてや」
「断る!」
薄情な治に私は後ろから痛くも痒くもないだろう拳をぶつけるのであった。
逃げ道はなく
(諦めや)(いややアホ)