「そういや、千聖放課後なんの用事だったん?」
「用事?」
「あー、これ。はい、これ侑な。こっちは治」
「なんや、これ」
「...ラブレター」
部活帰り、家に帰る間に治からの問に対し、鞄の中に入れていたラブレターを2人に渡す。2人とも最初は驚いていたが、侑はニヤニヤして笑いだしていて、治と一緒にゴミを見るような視線を侑に浴びせた。
侑はそんな羨ましがるやなって言っていたけど、治の方が1枚ラブレターは多いのだ。
お前の方こそ治を羨ましがれ。
「治何枚やった?俺4枚!」
「...5枚や」
「は?」
「やから5枚」
「なっんでやねん!!」
治のほうが1枚多いことを知らされた侑は予想通り騒ぎ出した。いや、ほんま煩いねんけど、コイツ。
たかが1枚やん。
「侑煩いからやろ」
「俺の方がイケメンやろ!な!?千聖!」
「付き合うなら治くんな、って声よく聞くで」
たまに女子の間である、侑派治派の派閥争い。私は大変どちらでもいいし、この兄弟のいい所も悪い所も知っている私には触れてほしくない話題のひとつである。なので私はこの話題になるといっつも、角名倫太郎でいいやって答えてる。心の中では巻き込んでごめんとは謝っている。
「それマジで言うとんのか?」
「うん。侑お調子者だから付き合うと大変そうって。なら治のほうが静かだし、ご飯あげればなんとかなりそうだって。えらくら軽くみられとんな、あんたら」
「いや、それどっちも悪口やん」
「いや、褒めてんねん」
ま、いい所でもあり悪い所でもあるんだよね、それって。
「もし、その中で付き合う人出来ても、私には危害加えないようにしてな。じゃ、また明日」
「おー」
くだらない話をしつつ家に着いたので私は双子に別れて自分家に入る。
私の手元には、1枚だけラブレターがある。そう私宛の。
読むか迷う。
でも読まないのは相手に失礼だもんな。
私は部屋のベッドにカバンを投げ捨てラブレターを読む。
背景 小山千聖様
先日応援に行かせて頂いた男子バレー部の試合にて、選手を一生懸命サポートするあなたに惹かれました。お付き合いをしたいわけではないです。ただ、あなたを見守り続けたいです。
え?ラブレター?でもお付き合いしたい訳じゃないの?でも見守り続けたいですってなに?す、ストーカー?いや、そんなことない。絶対ない。
気にしたら負けだよね。
「っ、寒っ!」
一瞬窓の外から視線を感じたが、部屋は2階なので気の所為だよね。
うん、このラブレターの事は誰にも言わないし、考えないようにしよう。
そうしよ。
明日からまた、練習厳しくなるらしいし、お風呂入って寝るか。
私はラブレターを机の奥底へしまったのであった。
ラブレターの行方