夢をみた。
侑が私をお姫様抱っこして、凄い勢いで走ってるのだ。近くに治もいて、侑に並走しながら私の名前を泣きそうな声で呼んでいて...チラッとみた侑は今まで見たことのない焦った顔をしていた。




2人ともどうしたん?って声をかけたかったけど上手く声は出せなかった。
まぁ、夢だから仕方ないのだけど。




夢?
私、さっきまでドリンク作りのため水道にいたはず。




「は??なんで宿舎?」



目を開けたら私が寝泊まりさせて貰ってる宿舎の部屋だった。
時計を見ると14時を指していて、更に疑問が生まれる。



なんで私、ここにおるん??
練習は!?



私は丁寧に掛けられとった布団をはがし、立ち上がった。



立ち上がった瞬間、ドリンク作りの時に経験した感覚があった。



私...ドリンク作りの際に倒れたとか言わんよね?倒れたならめっちゃ迷惑やん!
マネージャー失格.....入部して1ヶ月、大切な合宿。アホなん、私。昨日北さんに注意も受けたし、侑も治も顔色が悪かった私を朝から心配もしとってくれてた。
なのに私、大丈夫大丈夫って自分に言い聞かせてマネージャー業務を行ってた。



あと、痛みがくるまで生理ということを忘れてた。情けない...






ガラ....






「千聖大丈夫なんか?」
「え?お母さん」



部屋に入ってきたのは私のオカン...



「昼ご飯の手伝いに来とったんよ...なのにあんた倒れたって聞いてな...」
「う...ごめん」
「貧血やて...」



貧血...生理2日目、一番私の中でも生理の症状が重い日。早めに仕事したくて朝ご飯いつもより少なかったし、練習中水分もろくに取ってない。



「私、絶対みんなに迷惑かけたよな...」
「そうやね...」



お母さんの肯定が心に刺さる。



「監督さんも1年生なのに色々任せ過ぎたって言うとったで」
「うん」
「お昼のとき部員全員が心配しとったで」
「うん」


心配?迷惑かけたの間違いじゃなくて?



「あとな...侑くんと治くんにちゃんとお礼いいや」
「侑と治に?」



え?



「侑くんがあんたを運んでくれたんやで。治くんはあんたが熱中症かと思って冷たいタオルとか色々用意してくれたんやで」



あの2人が?
といつことは私がみた夢は夢じゃない。現実だったんか...



「うん、言うわ」



「もう少し休み...今から紅白試合するって言っとたで」
「いや、もう行くわ」
「ならちゃっと遅いけど、昼メシ食べていき」



私は勝手に溢れていた涙をふいて、食堂に向かった。



そこにあったのは、不格好なおにぎり2つ。



”特別に握ってやったで 侑”
”おにぎりは正義やで 治”




と書かれていたメモ。



それをみて引っ込んでいた涙がまた溢れてきた。


ほんとなんやねんあいつら...







双子なりの優しさ
(...しょっぱ、ってかおにぎりは正義ってなんやねん)


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