あのあと聞いたのは、ミツバさんが倒れ入院したということ。
ミツバさんが来てから沖田さんと土方さんの様子が変な気がする。ま、気づいたのは今日なんだけど···。あの3人なにかあったのかな···。ズケズケと聞ける間柄でもない気がするから聞けないな。
道場の近くを掃き掃除していたら、道場から沖田さんと土方ざのこの声が聞こえる。竹刀がうち会う度に鳴る音が、懐かしく私は道場の壁に寄りかかり中の会話を聞くと共に音を楽しんでいた。
えっ···
ミツバさんの旦那さんになる人が真選組の敵である闇商人···。沖田さんはミツバさんの幸せを願って、相手見逃せと言っている。でもそれは隊規違反。ちゃらんぽらんでも沖田さんは正義感は人一倍強い。いくら大切な姉の結婚相手でも見逃さないと思っていた。次の言葉を聞くまでは···
ミツバさんの命がもう長くないこと、生きているうちに女の幸せを、人並みの幸せを味あわせてやりたいと···沖田さんの切なる願い。
でも土方さんはその願いを冷たくあしらった。きっと土方さんは···
「土方ァァァァァ!!」
沖田さんの今まで聞いたことのない雄叫びに近い声。私は立ち上がり道場を出ていく土方さんに後ろから襲いかかる沖田さんをみた。
やばい···2人ともこれじゃ、怪我しちゃう。
私は箒をほっぽり出して救急箱を取りに行った。
救急箱を片手に道場に向かう途中、土方さんに会った。
「盗み聞きたぁ、趣味の悪いことしてんな」
「え、バレてて···」
「バレバレだ。総悟のやつは頭に血が上って気づいてなかったがな」
「···。土方さん、手当てしないと···」
「総悟の所に行ってきてくれ。今アイツを1人にしないでやってくれねぇか」
「土方さん···」
私はその意味を汲み取り急いで沖田さんの元へ向かった。
沖田さんは道場の前でうつ伏せで倒れていた。
「沖田さん!」
「···なんでおめェが」
「すみません、途中からですけど、土方さんとのやり取り聞いちゃいました」
「···おめぇもアイツの味方なんだろィ」
「え···」
沖田さんの瞳は初めてここに来たときにみた瞳よりも鋭く、何よりも目に光がなく絶望に満ちた目をしていた。
「なるも土方さんなの味方なんだろィ」
「なんでそういうこと言うんですか」
私は座ってくれた沖田さんの目の前に座り手当をしながら聞く。
「全部、あいつが奪っていくんでィ···。俺の大切なモン全て···」
大切なモン全てか···。その言葉が本音なら···私もその大切なモンに入って···ンン!?
「なに顔赤くしてんでィ···まさかおめェ、土方さんのこと···」
「ち、違いますよ!」
私は照れ隠しをするように沖田さんの頬にガーゼを強く貼った。
「いってーな!」
「私は土方さんの味方でもないです。あと、土方さんは沖田さんのこと嫌いじゃないと思いますよ、どっちかというと、好きだと思います。大切に思ってますよ」
「なんでィそれ。気持ち悪い···」
あ、一段と拗ねた。ここで土方さんの名前は禁句だったかな?
「今、沖田さんは自分に味方なんていないと思っていますか?私は、いつでも沖田さんの味方です。沖田さんにはたくさん助けて貰ってますし」
「···」
「私は、沖田さんのことバカでドSで人の話聞かないし、ワガママなバカって認識してますけど、人一倍不器用で優しいのは知ってます。何回も助けられましたしね。だからって言うのは変かもだけど、きっとなんとかなりますよ。ポジティブに行きましょ!」
「バカ2回は余計でィ···」
さっきまで光のなかった沖田さんの瞳に少し光が戻り私を映していてくれた。
味方は1人だけでいい
(あの、私も沖田さんの大切なモンに入ってますか?)(調子のんな···)