4月1日。
エイプリルフール。
午前中だけは嘘をついてもいい日。
よし!
「沙菜か?」
「あ、真希ちゃん、パンダ君、棘君、憂太君おはよー」
「明太子」
「おはようございます」
私はただいま母校である東京都立呪術高等専門学校にきている。今の4人は今日から学年が1個上がり2年生になったばかりの4人。
五条を通じて仲良くさせて貰ってる。
「何してんだ?」
「悟に用事か?」
「そー。エイプリルフールだから嘘つこうかなって」
「高菜...」
「それはやめたほうが...」
私が五条に嘘をつこうということを告げると、各々やめた方がいいと言う。なんで...私の嘘そんなにわかりやすい?だってやっぱり今まで好き勝手イジられてたんだから、別にいいよね!?
五条の事だからすぐ気づくと思っての事だし、硝子も面白そうだからってオススメしてくれた事だし。
「おっはよ!」
「来たぞ沙菜」
テンションが高いけど、今の五条は出張帰りだったりする。
「あれ?沙菜じゃん。僕に会いにきたの?」
と最近黒のアイマスクに変え目元を覆いながらもわかる、ドヤ顔。
「五条に用事があって...」
「うん?なになに?」
切り出すのも案外勇気いるな、これ。
「あのね、五条。私、五条以外に気になる人が出来たの。だから、わ、わ、別れて欲しい」
「は?」
私と五条の関係を知っている真希ちゃんたちもまさかの嘘に驚いた顔をしているし、なんなら五条は予想もしない言葉に立ち尽くしている。
ちなみにこれは完全に嘘であって、硝子の案である。私の本心ではない。
思ったことを口に出しやすい私が大丈夫なのだろうか?と思ったけど、「私女優と思ったら案外平気らしいよ」という硝子の言葉に騙され、私は言ったのである。
「沙菜、私らこれから任務だからいくな」
「う、うん」
これは絶対逃げた。
だって、さっきまでやめた方がいいとかいいながら憂太くん以外みんな楽しんでたもん。でも五条のただならぬ空気を察して逃げたに違いない。
「沙菜...」
「なに?」
ガンッ!
「...っ」
「それ本気で言ってる?」
生徒たちが居なくなったのを確認し、五条は私を廊下の壁に追いやる。私の顔の横には五条の腕があり、壁と五条の間に挟まれている状態。つまり壁ドンである。それも壁ドンする前に、アイマスクを首元に下ろしていて、五条の綺麗な蒼眼が私を見下ろす。
ヤバい...硝子...ヤバい。
ガチでキレてる。
そうですよね、出張帰りに高専寄って報告しにきたら彼女から気になる人出来たから別れて欲しいなんて言われたらそりゃキレますよね。
「ほ、本気...」
「それ僕の目をみて言えるの?」
い、言えない。
「沙菜」
五条の顔がだんだん近づいてくるのはわかる。でも五条の方をみたら終わる。嘘も全て。
「僕、お前に好きな人が出来ようが出来まいが、離すつもりないって言わなかった?」
「そ、そうでしたっけ?」
離すつもりはないとは言ってたけど、前者は言ってない。
「でも、いい機会か...。実は僕も出張先で可愛い子見つけてね。その子と今夜ご飯行く予定なんだ」
「え...」
え、まさかの五条も?
嫌私のは嘘だけど、五条のは??
嘘じゃなかったら、確実に私捨てられる?
「だから早く報告終わらせて夜の準備するよ。あ、ちなみに今日夜は硝子のところでも行ってて」
え、何それ。それって家で...
五条は壁ドンをやめて私の傍を離れる。
「ま、ま、待って」
私は五条の服を掴む。
「なに?」
五条の声色はまだ怒気を含んでいて、思わず肩が震える。
「ご、ごめん、なさい...」
「何が?俺が出張した隙に浮気したこと?」
いや、浮気なんて一切してない。
「ち、ちがう」
「じゃあなに?」
いらいらしてるな、五条。これも全部私のせいなんだけど。
「う、嘘なの!気になる人なんて1人もいない。五条しかす、好きじゃない」
「.....」
「だ、だから他の人のところ行ったらダメ...」
恥ずかしい。
この歳になって泣きそうになるのは相当恥ずかしい。
「っひゃ」
五条が私の手を引き自分の身体の中へ閉じ込めた。
「五条?」
「沙菜可愛すぎ。さっきの嘘だよ」
「え...」
「沙菜が嘘ついた罰だよ。僕も嘘をついた。沙菜以外にいい人なんていないよ」
え、なら怒ったフリも全て嘘?
「主演男優賞取れる演技だったしょ」
「.....っんん、..ぁ」
五条は私を抱き締めながら唇を落とす。
「僕に嘘つこうなんて沙菜は絶対無理だよ」
五条は今日がエイプリルフールだということを知っていて私の嘘に乗ったのだ。
「硝子には今度いい酒でも買ってやるか」
え?ま、まって、それって最初から硝子、五条の味方だったの??
「沙菜、今日寝かせねぇから」
昔から私は五条には単純な嘘でもつけないことが発覚したのであった。
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