小さい頃から、墓地や病院、通っている学校に足を運ぶ度に、全身をかける目に見えない恐怖が襲ってくることが時々あった。
その正体が幽霊なのかはたまた別のなにかなのか、私には知る術は持ち合わせていなかった。
小さい頃両親にも話したことがあるが、気味の悪い事を言うなと言われてから勘違いだったと笑うことにし、1人で抱え込んでいたが、高校に入学してからはその空気を感じる回数が以前に比べ増えてきたし、薄ら人なのかよくわからないシルエットがぼんやり見えることもあった。
あぁ、これは一体なんなのだ。
ある日の放課後、私は今日提出するはずの宿題忘れたため1人で教室に残り問題を解いている時だった。
ふと四方八方から視線を感じた。
ただの視線ではない、私をジロジロと品定めするような視線。あとブツブツと言葉じゃない音が耳に入る。
冷や汗がぶわっと出てくるのがわかる。
やっぱ幽霊なのかな?ただそういう空気を感じているだけで、私には幽霊なんて見えない!と自分に言い聞かせ、プリントから目線をあげると、
「え.....」
驚きすぎて、え、以外の言葉が出てこない。
私の周りに居たのは、漫画の世界でしか見ることの出来ない異形...。
頭が大きく、目玉が複数ある生き物、口が耳元までさけている生き物...。
その他多数の異形が私を見ている。
今まで感じていた恐怖はこれだったの?
なんで今になって見えるようになった!?
ううん、今はいいから、はやく...はやく逃げろ!
本能が”逃げろ!”と何度も警告してくれているのだが、私の身体は動かない。
目線を合わせたら終わりと分かっているのに、目線は動かない身体とは逆に動く。
「...っ!」
目線があってしまったのだ。
視線を感じてはいたが、この異形の化け物たちは私が人ということを認識はしていなかったはず。でもさっき目線があったことで確実に私という人間を認識したはず。
本格的に逃げなきゃ、死ぬ!
死期が迫った人間は予想以上の力を発揮することがあるとよくいったものだ...その言葉を残したヤツに言いたい、そんな都合のいい話しがあるかと。
あっという間に私は異形の化け物に捕まった。
意識は遠のき、潰された喉からは、ヒューヒューと空気が漏れる音しか聞こえない。
ねぇ、神様、私が一体何をしたというの?
千切られた腕も、引き裂かれた脚も、お腹も、もう痛いという感覚が全くない。
変な空気を感じるようになったときから私の運命はこうなるということは決まっていたのだ。
こう考えると、運命だから仕方ないかと思ってしまう私はきっと酸素が脳まで達しておらず思考が停止しているのだ。
まだ始まったばかりの高校生活...
イケメンの彼氏ができて、放課後デートして...そして少女漫画みたいな恋をするんだと思っていたのにな...
夢だったらいいな...目が覚めたらイケメンがそばに居てくれたら全然許すのにな...
親よりも先に死ぬことをどうか許して欲しい
私黒木沙菜は16歳の誕生日を迎える前に死んだ.....
はずだった。
「は?なんでまた目の前に...?」
私を殺そうとした化け物がいるのだ。
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