治2 | ナノ

8.これは現実だ


"あと2時間ぐらいで終わるから待ってとって!"



先生からの雑用を終え、冷房が効いている図書館で持ってきていた宿題を広げながらさっきの治の言葉がずっと頭を巡っている。


今は夢のなか?
それとも現実?


暑さとかでボーッとしてたなか言われた言葉に私は半信半疑だった。


人知れず大きなため息が図書館に響く。


ふとスマホを見ると治がいっていた練習終了時刻。私は全く手につかなかった宿題をカバンに乱暴にいれ、体育館へむかった。


体育館にはバレー部を見よとギャラリーがたくさんいた。インターハイが準優勝だったからだろう。きっと2学期が始まれば収まるだろ。



「穂花なにしとん?」
「あ、侑。治は?」
「急いで着替えに行ったで。いつもは自主練やるくせに」


そういう侑は少し寂しそうだった。治と練習したかったんかな。


「侑、治と練習できなくていじけてんの?」
「はぁ?んなわけあるかアホ!」


あ、いつもの侑だ。



「穂花!」
「あ、お疲れー」
「おん、ツムはほっといていこか」


治がジャージに着替えて急いでやってきた。私のために急いでくれたのかな?って思うと少し嬉しくなった。


「お、お前ら...」


治は私を見つけるな否や私の手を握った。
それをみた侑が、ニヤニヤしてるからすごくムカついたので空いてる手で軽く叩いた。


治に引っ張られる形で体育館をあとにすると、後ろから侑が、「穂花よかったなー!」っていうから今度なんかお菓子でもあげようと思う。1年の時から私が治に憧れていたのを知っていたのは侑だけだし。



「寄り道していこか?」
「いいよ」
「親御さん心配する前には帰すさかい...」
「大丈夫だよ、親いないし」
「は?」
「あ...」



ヤバイこと言ってしまったと青ざめる治に少しだけ可愛いなって思ったことは内緒にしとこ


「すまん...」
「大丈夫、親生きてるし。私だけこっちに来たんだ。だから一人暮らし」
「は?聞いてへんぞ」
「誰にも言ってないからね」


少し不機嫌になった治。
ずっと憧れていたからかな?ちょっとした変化を見抜けるようになった。
治もやっぱ侑と同じ。治のほうが大人しくみえるけど、根本的なところは一緒かな。


「私の家来る?カレー余ってて」
「!?カレー?」
「そう」
「いく!」


食べ物になると機嫌よくなるなー。かわいいなーって思いながら、治に私の家の場所を教えながら他愛ない話をする。その間ずっと手は握られたまま。


「ここだよ」
「立派やなー。あと俺んちから近いわ」
「叔父さんが所有してるマンションなのー」
「ほー」


治は玄関から一向に靴を脱がず、立ちすくむ。


「治?」


疑問に思い名前を呼ぶと、腕を引かれ治に包まれる。


ん?!

ま、まて、どういうこと!?


「今日からやけど、付き合うてる男家にあげる意味わかっとんの?」
「...あ、その」


全く考えてなかったです、なんて言えない。


「穂花」
「...んっ」


名前を呼ばれて顔をあげると顔を近づけていた治と唇が重なる。


キスした...


「フッフ、顔真っ赤やんな」
「初めてだし、そりゃ赤くもなるよ!」
「俺もやで」
「え?」
「俺も穂花がファーストキスの相手や。ついでの初彼女もな」


え、侑の話だと小学校高学年からモテてたし、中学もヤバかったっていってたから私が初めての彼女なんて信じられない。


「これ夢やないからな」

治は目を細めて笑い、再度私にキスをするのだ。




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