「あすかー、ちょっと頼まれ事してくれないかしら?」
「頼まれ事?いいよー」


私、内田あすかは江戸かぶき町で甘味処を営んでいる叔父夫婦の元で看板娘として暮らしている、大変平凡な町娘である。江戸より少し離れた田舎で暮らしていた私は、親から紹介される縁談話が嫌で、叔父の元へ逃げてきたのである。縁談で仮面夫婦になるぐらいなら、いくつになってでもいいから恋愛して、大好きな人と結婚したい。だから私は、いい人を見つけるためここまでやってきた所存である。


今年で20歳になる私。本当なら結婚しててもおかしくない歳である。まぁ、そのため親に何度も縁談話をずっと勧められてきたのである。田舎だと村の同じ年頃の娘は、17や18でお嫁さんになっていたもんな。全部縁談と聞いたけど...。だから親は焦ったのかもしれない。


江戸に来て1年が経つが、いい人なんて見つかりやしない。まして、お店に来るのは、おじいちゃんおばあちゃんが多い。お店に来てくれる素敵な殿方と恋愛!だなんて思ったりもしたな...上京した頃は。


まぁ、1人だけ20代の人がくるけど、うん、あの人はダメだ、論外。


おじさんはその人の事を「あーみえていい人」「腕は立つ!」とか言っているけど、ほぼ毎回、勘定がツケ払いってどうなの?20代でそれってどうなの?お店も経営してるっていってたけど、経営出来てるのかな?


結婚するなら金銭的余裕がある人がいい...。



「これね、万事屋さんに持って行ってくれない?」
「万事屋に?なんでまた」
「この間の台風の日お店の屋根壊れたでしょ?あれ直してくれたお礼」
「お礼って謝礼金は払ったんじゃないの?」
「あーそれはツケ代チャラにしただけよ。でも銀さんや神楽ちゃんがお団子毎回褒めてくれるから嬉しくて...」
「へぇー」



屋根の修理でツケ代全部チャラにしたの本当にいい人だな...おばさんも





私はおばさんから受け取ったお団子を持って万事屋に向かった。



万事屋とはさっきいっていた20代の人が経営している、何でも屋ってお店。よく分からないお店やっているから収入ないとか言うんじゃないのかなって思うぐらい不思議な職業である。私も初めて江戸に来た時、頼りはしたが...。


ちなみに神楽ちゃんとは万事屋の従業員。14歳なのに故郷から地球へ出稼ぎにやってきた天人らしい。ツケ払いするお店の従業員って給料貰えてるのかな...不安になってきた。


そんなくだらない事を考えていたら万事屋に到着していた。



ピンポーン


「こんにちはー」
「.....」


で、出ない。もう昼なんですけど...



「こんにちはー!」


私はもう一度、インターホンを鳴らしさっきよりも大きい声で声をかける。


え?定休日?いや、毎日定休日なもんだよね?万事屋って...。


「すみません!ってあすかさんじゃないですか」
「こんにちは、新八くん」
「こんにちは」


この眼鏡が志村新八くん。万事屋のもう1人の従業員。彼も16歳という若さでこんな給料ろくに払えない万事屋で働いているのはとても不憫に思う。



「あすかさん、最初のこの眼鏡が志村新八くんってなんですか?まるで眼鏡の名前が志村新八くんみたいじゃないですか!」
「え、だって、みんなそう言ってるからつい...」
「ついじゃねぇぇよぉぉぉ!!」


趣味はツッコミらしい。



「あの、銀さんと神楽ちゃんは...あ」
「新八てめぇ、朝からうるせぇよ...」



ここ万事屋の社長でうちの甘味処の常連、銀さんこと坂田銀時が今パジャマ姿でお腹をポリポリかきながら新八くんの後ろに立っている男である。


うん、年齢的にも身長もガタイの良さも私好みではあるけど、本当に銀さんは論外だ。今朝じゃなくて昼だし、ダラしない。



「ちょ!銀さん!今は朝じゃなくて昼です!あとお客さん来てるのにその格好はやめてください!」
「客だァ!?って!あすかちゃんじゃねぇか!ちょ!銀さんを見ないで!恥ずかしい!!」
「昼なのに今まで寝ている銀さんが悪いんですよ」



なんで神楽ちゃんも新八くんもこんなダメな大人慕っているのかな...本当に世の中って不思議である。


「ま、とりあえず中入れや」
「お邪魔しまーす」



私が応接間兼リビングである部屋に案内されソファに座る。銀さんは着替えに、新八くんは神楽ちゃんを起こしていたが、神楽ちゃんに殴られていた。



万事屋3人がいつもの格好で私の目の前に現れたのは30分後。



「で、あすかちゃんは何しに万事屋にきたわけ?銀さんにデートの申し込み?それなら今から行く?大人の...」
「はい、これ...」
「え?無視?」
「なにアルか?」
「うちのお団子」
「マジでか!?」


お団子ときいて、目を輝かせる銀さんと神楽ちゃん。神楽ちゃんに至っては口いっぱいにお団子を頬張っている。


銀さんも幸せそうにお団子を食べている。
ほんと、うちのお団子好きなんだ。


「なんでまたお団子なんて...」
「おばさんがね、この間の屋根の修理のお礼だって。ありがとうって」
「でもそれはツケ代チャラにするって話じゃ」
「そうなんだけど。多分個人的というか、いつも美味しそうに食べてくれるお礼だって」
「粋なことすんじゃねぇの」
「また何かあったら万事屋さんに依頼しますね」


私は出されたお茶を飲み干し、万事屋を出ていく。


「あすかちゃん、送っていくわ」
「銀さん、大丈夫ですよ。結構万事屋と近いし」
「いいんだよ。黙って男に送られろ」
「えー」
「えーって何?銀さんと帰るのがそんなに嫌!?ねぇ!?怒るよ!?」
「ふふ、うそ嘘、ありがとう銀さん」
「...最初から礼言っとけ」



論外とか言ったけど、銀さんと話すのは楽しいし、不器用だが、銀さんは優しい。


そういうとこは好きだったりする、恋愛対象外だが...。


まぁ、下ネタも多いし、天パだし、死んだ魚のような目をしているけど、話しやすくてなんだかんだいって元気を貰える相手なので、これからもお店に来てくれるといいな。


たわいの無い話をしているうちにお店まで到着した。



「銀さーん」
「んだよ」
「明日はお店に顔出して下さいね、待ってまーす」
「ほんとあすかちゃん、商売上手だよね」
「お褒めに頂きありがとうございます」


銀さんは背中をを向け手を上げて万事屋に帰っていった。


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