17:終幕


「なに、これ...」

名前はスクープ記事を見て唖然とした。
その記事に書いてあったのは。

“官吏と清純派アイドル熱愛!”

大きな見出しと共に、鬼灯が両手で名前の肩を掴んでいる写真と、名前の家へ一緒に入っていく写真が掲載されていた。
名前は頭が真っ白になった。
外で騒がしい声が聞こえる。
きっと報道陣だ。
マネージャーから電話がかかってきた。
怒られるかと思いきや、名前を心配する内容だった。
とりあえず否定も肯定もせずSNSの更新も一旦やめるように、それからなるべく外へ出ないように、と言われた。
電話を切ると名前はベッドに寝転んだ。
もう、終わりだ。
だめだ。
マイナスな考えばかりが浮かんでくる。
きっと鬼灯さんもこんな記事を書かれて迷惑だろう、もし火遊びだったとしたら本当に迷惑甚だしい、と思い、とりあえず謝ろうと電話をかけた。

「...もしもし」
「もしもし、名前です。お忙しいのにすみません。...あ、あの...」
「分かっています。あの記事のことですよね。すみません、私のせいです」
「!鬼灯さんは悪くありません...!むしろ記事になんてされてしまって本当に申し訳なく思います...ご迷惑ばかりおかけして...鬼灯さんは本気じゃないのに調子に乗ったわたしが悪いんです...」
「.........はぁ?今なんて言いました?」
「鬼灯さんは本気じゃ、」
「あれだけ気持ちを伝えたのにまだわからないんですか?」
「だって、」

「いい加減にしてください」

真後ろから声が聞こえた。
振り向いた途端強い力で引き寄せられて抱きしめられた。

「鬼灯さん、どこから...」
「表は報道陣がすごいので裏口から入りました。...この状況であなたを一人にしておくのが心配で」

鬼灯は名前の額にキスをした。

「私が責任を取ります」
「え...?」
「結婚してください」
「えっ...、えぇぇ...!?」
「なんですか、嫌なんですか」
「いえ、そんな、嬉しいですけど...っ!わたしたちまだ付き合ってすら...」
「私が付き合ってもいない女性を好きという感情を利用して抱くと思ってるんですか?」
「.........いえ...」

付き合いましょうなんて話をしていないため、名前は本気で付き合っていないと思っていたのだ。

「一応確認しますが他に心に決めた男は?」
「...っもう、鬼灯さん以外にいませんよ...っ!」

名前は鬼灯にぎゅっと抱きついた。





「私、鬼川名前は、アイドルを引退します」

会場内に名前の声が響いた。
名前はプロポーズから数日した後、マネージャーやプロデューサーと相談し、記者会見を開くことにした。
引退すると決意をして。

「記事の件ですが、書いてある通りでございます。
私は結婚をします。
皆様を裏切る形になってしまったこと、大変申し訳なく思っています。
応援してくれたみなさんには申し訳ないのですが、もう私の理想のアイドルでいることは叶いません。
今後は女優・タレントとして活動します。
...長い間、私に夢を見させてくれて本当にありがとうございました。」

そう言い切ると名前はゆっくりと頭を下げた。
フラッシュが大量に焚かれる。
集まった記者達が次々と質問をしてきた。
名前はそれに応えることなく、立ち上がって再び一礼すると袖へと去っていった。

「...名前、さん...」
「マキちゃん...」

楽屋に戻るとマキがいた。
心配で駆けつけてくれたとのことだ。

「えへへ、バレちゃった...」

名前は苦笑いしおちゃらけて言った。

「大丈夫、ですか...?」
「......うん、多分」
「名前さんが引退しちゃうの、すごい寂しいです」
「うん、ごめんね、」
「でも私、鬼灯様とのこと応援してます」

マキちゃんはすごくいい子だな、と思いながらありがとうと告げた。


後日の話。
ネットのエゴサと芸能関係者からの話によると、全員ではないが、名前のファンは名前を支持し続けてくれているらしい。
元々恋愛禁止のルールも、公言したわけではなく自身で決めていたルールだった。
しかし名前のその決心と本当に守る姿勢に惚れ込んだファン達は、「もういいよ」「お幸せに」と口を揃えて擁護するのだった。
名前のアイドル人生はここで一旦幕を閉じるが、名前はそういったファンのためにもこれからも頑張ろうと決意した。


終幕
(色々ありましたが、わたし、鬼灯さんと一緒になれてとっても幸せです)
(そうですか。私もですよ)



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