14:キス魔かよ


「「こんにちはーーっ」」
「ピチピチピーチのマキでーーす」
「鬼カワキュートな名前でーーす」

人気アイドルの登場によってわーわーと会場は盛り上がる。

「鬼灯ちゃんよく呼べたわねェー!ピーチ・マキちゃんも鬼川名前ちゃんも今大人気でしょ?」
「何回かお会いしたことがありまして...一応番号控えといて正解でした」

まぁ、名前さんの連絡先は個人的に欲しかったからですけどね、と鬼灯は心の中で付け加えた。
そうしているうちに挨拶を終えた二人がステージ裏へと戻ってきた。

「マキさん、名前さん、どうもありがとうございます。これ粗品ですが」

鬼灯は戻ってきた二人に金魚草の花束を渡した。
金魚草がビチビチと震え花束がガサガサと動いている。

「わーかわいい!ありがとうございます!」
「いっいらねぇっ......いやっ!どうも!ありがとうございますっ...!」
「あとコレも...応募券送るともれなく貯金箱当たります」

鬼灯が金魚パイを二人に渡すとマキは引いていた。
いらなそうである。
楽屋に来ると小鬼の男の子が二人いた。
鬼灯と仲が良さそうに話しているのを見て名前は微笑んだ。

「マキちゃん、模擬店とか見にいこうよ」
「行きたーい!ねェ模擬店とか見たーい」

マキがマネージャーにそう言うと、人が多いし心配という理由で許可を得られなかった。
一応名前も自身のマネージャーに聞いてみたが、同じ理由で断られた。

「...お二人、身長はいくつですか」
「?153センチですけど」
「わたしは160センチです」
「あ、じゃあ着れますよ」
「??」

その後、二人は金魚を模した着ぐるみを着せられ、鬼灯に手を引かれて外を回った。

「(模擬店に回る、とは...)」

しかし公の場で手をつなげることに名前は少し嬉しさを覚えた。
...着ぐるみ越しではあるが。





「あ、」

巡回を終えて楽屋で一息ついていると、鬼灯が部屋に入ってきた。
マキは結局変装をして模擬店を見に行き、それを知ったマキのマネージャーが探しに行き、名前のマネージャーも便乗して外へ行ってしまった。
つまり今は楽屋に二人きりだ。

「...眼鏡をかけた姿も素敵ですね」
「そうですか?ありがとうございます」

鬼灯も今は少し休憩できる時間のようで隣の椅子に腰掛けてきた。

「惚れましたか?」
「またそういうこと聞く...!」

ズイ、と迫って来る鬼灯を押し返すと、鬼灯は小さく舌打ちした。

「...鬼灯さんって、」
「はい」
「マキちゃんとわたし、どっちが好きなんですか?」
「それは、アイドルとしてでしょうか。女性としてでしょうか。」
「どっちもです!鬼灯さんっていっつもマキちゃんと一緒にいるじゃないですか」
「貴女は嫉妬が多くて忙しいですねぇ」
「なっ...!」
「抱き枕まで持っているというのに」
「あんな高いもの買ったんですか!?」

だいぶ前に出した抱き枕だ。
お値段はご想像にお任せする。
ちなみに数量限定で完売済みだ。

「女性として好きかどうかですが......この前のアレじゃ伝わりきらなかったですかねぇ?」

鬼灯が黒いオーラを出しながら眉根を寄せて迫ってくる。
この前のアレ、を思い出した名前は頬を染めた。
椅子から立ち上がって後ろへ一歩。
すると同じように一歩、鬼灯が近付いてくる。
一歩下がり一歩迫られるのを何度か続けていると、トン、と背中に壁が当たった。

「今日はあの三流記者も入ってこれないのでスクープの心配もありません」

トン、と鬼灯が壁に手をついた。

「逃がしませんよ」

鬼灯の柔らかい唇が名前の唇へと触れた。
名前は心地よさと胸の高鳴りを感じ、思わず目を伏せた。
一度離れたと思うと、再び唇が重なる。
唇を愛撫するかのように何度も口付けられる。
やがて自然と開いた唇に舌が差し込まれた。
舌を絡め取られ弄ばれ、上顎をつつ、と舌でなぞられるとガクリと腰が抜けた。
幸い鬼灯が腰を支えてくれたため、尻もちをつくことはなかった。

「〜〜っ......」
「腰が抜けるほど良かったですか」
「うるさい、です...」

鬼灯は名前を椅子に座らせた。

「私はそろそろ戻ります」

そう言って鬼灯は楽屋を出て行った。
一人残された名前はあまりの恥ずかしさに顔を手で覆ったのだった。

「覗き見とは趣味が悪いですね、マキさん」

ドアを開けると壁にもたれかかってどうしたらいいのかわからない顔をしたマキがいた。
マキは鬼灯に指摘されるとさっと顔を青くした。

「すすすっ...すみません...!別に覗き見とかでは...!た、たまたまですたまたま!」
「まあいいですけどね」

鬼灯はそう言うとそのままスタスタと廊下を歩いて行った。


キス魔かよ
(あの...名前さんって...鬼灯様と付き合ってるんですか?)
(付き合ってないけどどうして?)
(さっき......ごにょごにょ)
(い、言わないで...!周りには!お願い...!)



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