ふと目が覚めた。
温かい。今何時だろう。
わたしは布団から起き上がって……布団?


「あれ…?」


昨夜ソファーで眠ったはずのわたしは、なぜか布団にワープしていた。
これは確か、オドロキくんを寝かせた布団じゃなかったか…。
かすかにオドロキくんの匂いがする。
壁の時計を見るとまだ5時だった。

洗面所を借りてからキッチンへ行くと、ベストとネクタイはなく、シャツのボタンを開けてラフな格好をしたオドロキくんがコーヒーを沸かしていた。


「オドロキくん?」
「あ、名前さん!おはようございます!」
「は、早いね…」
「いつもこれくらいの時間に起きてますよ。名前さんも飲みますか?」
「あ…じゃあ、お願いしようかな…」
「ハイ!任せてください!」
「(元気だなぁ…)あの、オドロキくん…」
「なんでしょう?」
「もしかして、わたしを布団に運んだのってオドロキくん?」
「あ、そ、そうです…」


オドロキくんは手際良くカップにコーヒーを注いで、わたしに渡した。
二人でソファーに座りながら続きを話し始めた。


「夜中トイレに起きたら名前さんがソファーに寝てたので…あの、名前さんこそ介抱してくれてありがとうございます」
「いえいえ。ごめんね、重かったでしょう」
「そんな!軽かったし柔らか…なんでもないです!」
「ソファ寒くなかった?」
「大丈夫です!」
「二日酔いとかは大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫です!すみません…みっともない姿見せてしまって…」
「憶えてるんだ」
「あ、はい…曖昧ですけど…」


それ以降はお互いに黙ってしまった。
オドロキくんはきっと勝敗の行方を聞きたいのだろう。


「…オドロキくん」
「ハイ!」


ちょいちょい、と向かいのオドロキくんを手招きした。
?マークを浮かべたオドロキくんはすこし近付いてきた。
そしてわたしは目の前にある広いおでこにちゅ、と軽くキスをした。


「なっ…!えッ…!?」
「勝負で勝ったのと、わたしを運んでくれたお礼ね」
「あ、え、勝った…?」
「みぬきちゃんには引き分けって言ってあるからナイショだよ」


わたしはにこ、と笑って人差し指を口元に置いた。


「お、おおおおおおおっ!!!!」
「なっ、なに、どうしたの…」
「オドロキホースケ、今日も頑張りますッッ!!」


顔を真っ赤にして立ち上がって叫んだかと思えば、失礼しますッッ!!と言って事務所を出て行った。
若いなぁ。





「名前さん」
「んー?」


その日の夜。
みぬきちゃんを車で送ってる時のことだ。
助手席のみぬきちゃんは運転しているわたしに話しかけてきた。


「名前さんって結局どっちが好きなんですか?」
「ぶはっ」
「ずっとこのままのつもりですか?可哀想ですよ!」
「うーん…そうは言ってもね…大人って難しいのよ」
「どうしてですか?」
「そうね…大人の余裕さや経験を持っているのは成歩堂さん。結婚するなら年上で甘えられる成歩堂さんがいいわ」
「じゃあ…」
「でもね、オドロキくんの初々しさも好き。どちらも真っ直ぐで、どちらも法曹関係者。成歩堂さんは金銭的な不安があるけどオドロキくんは年下だから甘えられないっていう不安がある。難しいのよ」
「みぬき、わかんない」
「あはは、みぬきちゃんにはちょっと早かったかな」
「好きなら、そんなの関係ないですよ…」
「………」


事務所についた。


「みぬきちゃん、わたしはね」
「はい」
「オドロキくんが好きよ。…でも、オドロキくんがいなかったらきっと成歩堂さんを好きになってたかもね。それもあって揺れてる。そんな簡単に返事なんてできないよ…」
「名前さん…」
「いっぱい話しちゃってごめんね。お疲れ様」
「…お疲れ様です」


みぬきちゃんがドアを閉めたのを確認すると、わたしは自分の家に向かった。



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