13


名前と外で食事をした帰り、コンビニに寄ってアイスやお菓子、お茶や酒などを買い、鬼灯はまるでこれからホテルにでも向かうかのような流れだな、と一人で思ったのだった。
鬼灯がコンビニ袋を持ち、名前が少し離れて歩く。

「(距離、遠いな...)」

名前はその距離を不満に思い、そっと近付いて鬼灯の小指を掴んでみた。

「......!」

ぴくり、と鬼灯の指が動いて、鬼灯が名前の顔を見た。
その顔は今の行動を咎めるような顔をしている。

「......だめ?」
「......駄目です」

そう言って鬼灯は自身の手を引いて名前から手を離した。

「なんで?」
「親御さんに見られたらどうするんです」
「私は別にいいもん」
「私の立場が危うくなるんですよ。最悪もう会わせて貰えなくなりますよ」
「えっそれはやだ...じゃあ我慢する」
「家に帰ったら好きなだけどうぞ」
「...お兄ちゃんのそういうとこ好き」
「どうも」

名前は余程我慢していたのか、鬼灯宅に入って玄関の扉を閉めるなり抱きついてきた。
鬼灯は手を伸ばして鍵を締め、ポンポンと名前の頭を撫でた。

「貴女、誰にでもこういう事してないでしょうね」
「しっ...!してないよ!ばか!お兄ちゃんにだけだよ!」
「...そうですか。ならいいんですけど」

靴を脱いで上がり、二人で部屋まで戻った。
ローテーブルに買ってきたお菓子等を広げ、酒盛り(名前は酒ではないが)を始めた。

「学校は楽しいですか?」
「まあまあかな。みんな受験シーズンでピリピリしてるよ。専門行く人は呑気だけど」
「そりゃそうでしょうね」
「お兄ちゃんは?会社楽しい?」
「世の中のサラリーマンの中で会社楽しいと思ってる人は1割かいても2割だと思いますよ」
「そっかぁ...」
「まぁでも将来のためです」
「将来?」
「結婚したり出産や養育費老後...」
「け、結婚...したいの?」

名前は目を見開いて鬼灯を見た。

「まぁ人並みに願望はありますよ」
「えええ...!!」
「所帯持ってた方が昇進しやすいなんて事もありますからね。本当かどうかは知りませんが。それにいい歳して結婚できてないと周りの目も痛いんですよ」
「そうなの...?」
「そうです。それも大人になったら分かりますよ」

名前は鬼灯の結婚願望を聞いて眉を下げ分かりやすく落ち込んだ。

「分かりやすっ」
「だって...」
「貴女は妻になる側なんですから、勉強も大事ですが花嫁修行もしなきゃ駄目ですよ」
「いい女になったら、結婚してくれる?」
「どうでしょうね」

名前はむっとした顔をして鬼灯を睨んだ。
むくれている顔も可愛いな、なんて鬼灯が思っているとは全く思っていないだろう。

「貴女も今後誰と結婚するか分からないでしょう」
「うー...ん...(私はお兄ちゃんと結婚したいんだけどな...)」

名前はしばらく黙った後じっと一点を見つめていたかと思うと、すっと手を出して鬼灯の持っているビール缶を取ろうとした。
鬼灯が間一髪の所で避けたが。

「ちょっとちょうだい〜」
「駄目です」
「じゃあチューして」
「このワガママ娘...」

にじり寄ってキスをせがむ名前を一度は避けたものの、その愛らしい瞳に見つめられて鬼灯は欲が勝ってしまい、一瞬触れるだけのキスをしてから再び酒を飲み始めた。
名前は不服そうだ。

「......短い」
「文句を言わない」
「もっと」
「マセガキめ」
「お兄ちゃんにだけだよ」
「JKに手を出して罪悪感を感じる私の身にもなって下さい...」
「分かんないよ、子供だから」

そう言って名前は鬼灯の腰に抱きついて頭と体を預けた。

「...ね、えっちしよう」

名前のその爆弾発言に鬼灯は口内の酒を吹き出しそうになったが、何とか思い留まった。
コン、と強めに缶を置いて、名前に向き直った。

「あのですね、キスだけでも限りなくグレーなんですよ。それは何があろうと絶対にできません」
「...お兄ちゃんって結局私のことどう思ってるの...?エッチしたいとか思ってるの?」
「......それは貴女が大人になったら言いますよ」
「.........」
「まぁ少なくとも、付き合ってもいない上に好きでもない女にキスなんてしませんが」
「......!!ううう...!すき...!」

そう言って名前は再びぎゅっと鬼灯に抱きついた。

「はいはい」

ポンポン、と頭を撫でながら単純で可愛いな、と心の中で思った。
名前がしばらくして離れたかと思うと、鬼灯の後ろ首に腕を回してキスをしてきた。
男慣れしていない、ただ唇と唇をくっ付けただけの可愛らしいキスだ。
その後も可愛らしく何度も啄ばむようにキスをしてくる。
鬼灯も最初は我慢していたが、次第に我慢ができなくなっていって、やがて名前を抱えて対面座位の姿勢にさせてから後頭部を押さえて攻めの姿勢に入った。

「...は...おにいちゃ...ふ、んん...」
「(エッロ...)」

息が苦しいのか興奮しているのか、息を弾ませながらキスに応える名前がたまらなく愛おしくなった。
無意識に差し出しそうになる舌を抑え、名前の柔らかい唇を何度も何度も食んで愛撫した。
やがてそ、っと控えめに差し出された舌に一瞬驚き、口付けを中断して唇を離した。

「それはいけません。というかどこでそんな知識を...」
「なんでだめなの?」
「私が我慢できなくなります。...今日は自分の部屋で寝てください」
「やだ」
「我慢できる自信がありません」
「我慢しなくていい」
「...ハァ......」

言う事を聞かない名前に呆れつつ、それでも一緒にいたいと言い寄ってくれる名前に悪い気はしない、むしろ嬉しく思っている自分に対しても呆れた。

「(求められるのも言い寄られるのも歴代彼女達と何ら変わりないのに何故名前に対してだけこんな...)」

じっと見つめてくる鬼灯を首を傾げながら見つめ返す名前。

「...ハァ。わかりました。もう寝ましょう。歯を磨いてきなさい」
「はーい。ありがとお兄ちゃん」

ちゅ、と頬にキスをして名前は窓の向こうへと消えて行った。

「はぁ...可愛い...なんなんですか本当...」

歯を磨いて一緒にベッドに入って、もう一度熱いキスをしてから眠りについた。



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