10


鬼灯はいつのまにか気を失っていたらしく、目を覚ますと病院のベッドに寝かされていた。
片足で切った方の足に触れるときちんと足と縫い跡があり、足が繋がっていることを確認してふぅと息をついた。

「(あ...助け呼ぶの忘れた)」

そんなことを考えてると、扉の外が騒がしくなった。

「もー!からかわないでよー!」
「だって本当のことじゃん」
「そうだけど...」

ガラ、とノックも無しに扉が開いた。
そこには名前が立っていた。
名前と目が合うと、名前は持っていた花を床に落とした。

「お...おき...おきたああああ!!!」

そして鬼灯の元まで走り、鬼灯に勢いよく抱きついた。

「うわっ!こら!一応怪我人ですよ!」

そんな制止も聞かずしくしくと泣いている名前を見て、鬼灯は優しく頭を撫でた。

「心配したんだよばか...」
「心配したのはこっちですよ...怪我はありませんか?」
「ないよ...ばかぁ...なんで足なんて切るの...」
「貴女が殺されてしまうと分かって居ても立っても居られなくなったんです」

ちら、と扉の方を見ると名前が落とした花を拾い上げる白澤がそこにいた。

「なんで貴方...」
「お前の血の跡を辿って助けに来てくれた人がいたんだよ。じゃなかったら未だに幽閉されてるっつの。役立たずめ」
「文句を言うくらいなら貴方も足切ればよかったじゃないですか」
「ふざけんなお前みたいな気違いと違うんだよ僕は」
「小心者って事ですかね」
「なにを...!」
「ていうか邪魔なんで退散してください。察しろ」
「っ......」

ぽかんとしている名前を見て、白澤は仕方ないなと溜息をついて病室を出て行った。
名前は鬼灯から離れ近くにあった椅子に腰掛けた。

「白澤さんと知り合いだったの?」
「いえ、一緒に監禁されて知り合っただけです」
「......ばか」
「バカなりに貴女を心配して足切ったんですけど」
「...そういうとこがばかって言ってんの」
「それくらい大切なんです」
「.........」

名前はそう言われて照れたように頬を赤らめ視線を逸らした。

「そういえば、帰ったら話をしましょうって言いましたよね」
「...うん」
「続きを話しましょうか」
「......元カノと会うのやめて」
「いいですよ」
「えっいいの?」
「ちなみに理由は?」
「.........」
「黙っていては分かりません」
「......会ってほしくないから」
「答えになってません」
「なってるもん」
「素直に好きだから会ってほしくないと言ったらどうですか?」
「すっ...!?!?」

名前は驚いて椅子から飛び上がった。
カシャーン、とパイプで出来た簡易的な椅子が倒れた。

「なんですか」
「す...すきじゃ...」
「......」
「......」
「......」
「んあああ!!もういい!この話終わり!!」
「勝手に終わらせないでください」
「どうぞ元カノにも好きに会ってどうぞ!!」
「素直じゃないですねぇ。私は名前の事が好きなんですけど」
「大好きなんでしょ、親友として」
「違います。女性としてです」
「はは、何言って...」
「足が動くなら今すぐ立ち上がってキスしてやりたいんですが」
「っ......」
「答えは?」
「.........」
「名前」
「...すき」
「じゃあ付き合ってくれますね?」
「......うん...」
「なら元カノと会いません。会う理由もないので」

名前は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑って椅子を直して再度腰掛けた。

「......え?キスしてくださいよ」
「はぁ!?なんで!!」
「私からできないので」
「じゃあお預け」
「悲しいですね、名前は恋人にキスのひとつもしてくれないんですか。あーあじゃあ元カノと...」
「うるさいなぁ!わかったよ!目閉じて!」

鬼灯は可愛い、と思いながら素直に目を閉じた。
名前はベッドに手をついて鬼灯に近付き、一瞬躊躇った後意を決して唇を重ねた。
すぐに離れようとしたが、鬼灯が名前の後頭部をおさえてもっと熱烈なキスをしてきた。
ようやく頭を離された頃、名前は「ばか!」と言い照れながら病室を出て行った。



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