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「!パパ!?」
「ああみぬき、おはよう」
「どうしたのその格好!」
「うん、ちょっとこれからお仕事しに行くからね」


あれから数日後。ボクは青いスラックスにワイシャツと赤のネクタイを纏い、既に登校の準備万端のみぬきに朝食を差し出した。
みぬきもあと数日で卒業だ。


「へえー。パパのその格好、久しぶりに見たな。やっぱりかっこいい」
「本当かい?嬉しいなぁ」
「名前さんにも見せつけてみたら?」
「なんでそこで名前ちゃんが出てくるのさ」
「みぬきの目はごまかせません!」
「はっはっは。みぬきには叶わないなぁ」
「パパ、名前さんと付き合わないの?」
「そうだなぁ…名前ちゃんの都合ってものもあるからね」
「みぬき、名前さんみたいなママがほしい!」
「それはボクじゃなくて名前ちゃんに言ってくれよ」


娘と恋バナする日が来るなんて、みぬきも大きくなったものだ。
パンをひとかじりして、少し微笑んだ。





「すみません、先日面会の予約をさせていただいた成歩堂ですが」
「成歩堂さま、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


男に案内され、応接室に通される。
雑居ビルの1フロアを貸し切ったところが事務所のようだ。
想像していた所より広い。
数分待っていると、扉のノックと共に、黒いスーツに身を包んだ中年の男が入ってきた。
ボクは立ち上がって挨拶をし、彼から名刺を受け取ってボクの名刺も差し出した。


「アンタ、あの成歩堂龍一なんだってな?」
「ご存知でしたか。光栄です」
「弁護士バッジは剥奪されたと聞いていたがなァ…」
「そちらに書いてある通り、今は芸能事務所を営んでおります」
「へェ。で?芸能事務所の所長サンがウチに何の用で?」
「では本題に入らせていただきますね。本日は、債務整理の件で参りました」
「債務整理だと?誰のだ」
「苗字名前さんの、です」
「名前だと?あの女…よりにもよって成歩堂龍一に…!」
「しかしですね。そちらも既に分かっているとは思いますが、債務整理の必要すらないですよね?」
「な、なにを…」
「失礼ですが、登録番号と金利に関する書類と、借用書を見せていただけますか」
「テ、テメエ、いきなりなんなんだ!帰れ!」
「見せていただけないのでしたら、返す必要もないですし、それにボクには警察関係者が多いのでね。告発させていただいてもボクは構わないのですが…」
「ほう…成歩堂龍一、生きてここから出られると思うなよ?」
「万が一ボクが帰らなかったら、ということも想定して全て関係者には伝えてあります。残念でしたね」
「テ、テメエエエエエエ!!!あの女がウチにとってどれだけデカイ存在かわかってんだろうなァコラァ!!!」
「それで、名前さんの…いえ、名前さんのお父様の借入については、いかがいたしますか?」
「聞いてんのかコラァ!!!!」
「聞いていますよ。いかがいたしますか?」
「このっ…!」


男が僕に向かって拳を振り上げた時。


「タイホッスゥウウウウウ!!!!!」
「な、なんだ!」
「話は署で聞くッスよ!!」
「成歩堂龍一テメェ!!!!最初からそのつもりだったな!!!」


手錠をかけられながら男は言った。


「だから言ったじゃないですか。全て関係者には伝えてあるって」


男は喚きながら警官に連れて行かれた。
ボクは冷や汗を流しながら先程の大声の主に言った。


「ありがとうイトノコ刑事。ボク一人じゃどうにもならなかったよ…」
「アンタの頼みときたら断れねッス。それより誰なんスか、この苗字名前って。弁護士でもないアンタが引き受けるなんて…」
「そうだね。…ボクの大切なヒトだよ」
「ついにそういうヒトができたッスか!!御剣検事にも報告しとくッス!!」
「やめてくれよ、恥ずかしいだろ」


とにかく、これで一件落着かな。
ああ、はやく彼女に報告してあげたい。



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