ルビー(不知火ゲンマ)


窓から見えるのは灰色の空だった。

この世界に入ったあの時から覚悟はしていたはずだった。
今までにこんな事が無かったわけじゃねぇ。
けど、今回の重みは一際俺に重くのしかかった。

オレは薄っぺらい紙にペンをはしらす。

『―上記の理由により、特別上忍1名が殉職。』

それは一瞬の事だった。俺の目の前で同期の忍がやられた。
隊長であるオレの責任だと謝ったが、そいつは最後の最後に笑顔で
オレに幸せになれと言って息絶えた。

「…くそっ!!」

悔しさに拳を机に叩きつける。
机がきしんだ音だけが部屋に響いた。

「…ゲンマ」

突然、部屋の外から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
そいつは扉をゆっくりと開けると、迷わず俺の隣に座る。

「ゲンマ、これ見て。これ石なの!石だなんて思えないくらい綺麗よね」

「…華子?」

「ほら、手だして!」

華子は俺の手を取ると、無理矢理石を握らせた。
手を開いて見れば形はいびつだったが、確かに綺麗な赤い色をした石だった。

「これね、川で見つけたの」

オレの膝に手を置きながら、華子はニコニコと笑顔で話しだす。

「見つけた時ね、ゲンマの石だってすぐに思ったの!ほら、赤いルビーがゲンマの誕生石でしょう?」

笑顔なのにどこか声にかげりを感じた。

「これもゲンマのお陰だよ!」

オレの膝に水滴が落ちる。

「ゲンマが私に外の世界を教えてくれたからこの石に出会えたの!」

「おい…華子、お前何泣いてn…!!」

慌てて伸ばした手を通り抜けて、華子は俺の首に抱き着いた。
両手を強く首に巻きつけて、顔を首筋に埋めながら話し続ける。

「…ゲンマはね、私に大切な事を教えてくれた大切な人なの!」

声が震えていた。

「だから!ゲンマの悲しい顔見てると辛くて…苦しくて…どうしようもなくっ…て…」

自然とオレの両手は、華子の存在を確かめるように強く抱きしめた。

「華子…」

泣きじゃくるこの腕の中の大きな存在に、俺は何度も何度も名前を呼んだ。

お前と出会ってから空を見るようになった。
お前と出会ってから笑うようになった。
お前と出会ってから痛みが分かるようになった。

だから、

お前が居てくれれば、俺は歩き出せるんだ。

「華子…ありがとう」

耳元にそっと囁いた。




*END*

Back Top








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -