苦手な人(真田弦一郎)



「触んないでっ!!」

「ちょっとくらいいーじゃねぇかよ」

「嫌っ!!」

(最悪。なんでこんな連中に絡まれなきゃいけないんだろう…)

誰か助けてって思った時に、一番最初に思い浮かべたのがまさかのあの人で、
そんな自分自身にびっくりした。

何でかって…その人は苦手だったから。

いつもムスッと顔をしかめてたし
いつも口調が厳しかったし
いつも堅苦しかったし…



「いい加減にしろよ!こっちから下手にでりゃあナメやがって!!」

あなた達が悪いんじゃない…という言葉は危険を感じて飲み込んだ。

(どうしよう…)

すれ違う人々はみんな見て見ぬフリをしている。

(酷い!誰か助けてよっ!)

「この女まだ抵抗する気か?しょーがねぇ…てめぇら一発殴って連れてこい!」

(もう駄目っ…)

振り上がる手の恐怖に目を閉じた。
しかし、いくら待っても痛みは感じない。

「…?」

不思議に思いゆっくりと目を開ければ、
男達はひとりの男の周りに無残にも倒れている。

「……」

私の苦手なムスッとした顔
厳しい口調
堅苦しい態度で

その男はゆっくりと口を開いた。

「たるんどるぞ!さくら!」

いつも嫌いな言葉もこんな時に言われたら、

「さ、真田!?」



かっこよく聞こえちゃうじゃんか。



*END*

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