赤髪(丸井ブン太)
「おい空、誰だコイツ?」
隣に座っている彼は明らかに不機嫌そうな声で言った。
「知らない」
「知らねーとは言わせねーぞ」
そう言って、私の卒業アルバムの写真を思いっきり指さす。
「こんなに仲良くチューしてんじゃねーか!!」
…呆れた。
「だってそれ保育園の時だよ?覚えてる訳ないじゃん!」
「ガキだったら何しても良いのかよ?」
「ちっちゃいんだから可愛いでしょ?」
それを聞いたブン太は、面白くねーと呟くと
アルバムを放り投げて床に寝転がった。
「……」
(しょうがないなぁ…)
私は筆箱からペンを取り出すと、
写真の中に居る名前も知らない男の子の髪を塗った。
「ねぇ…」
肩をつつくと、彼はムスッとした顔で振り返ったが、
「…これ…ブン太」
照れながらさっきの写真を指さすと彼の顔は見る見る変わり、
「…許す!」
そう言ってニコニコと私を抱きしめた。
「へへっ…」
間近に見える彼の髪は写真の男の子に負けないくらいの
赤い、赤い色だった。
*END*
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