結婚指輪(仁王雅治)
「またそれをしてるのか…」
雅治は私の薬指を見ると、呆れ顔で言った。
「結婚記念日になるとそれをするのはいいが、せっかくの指輪が泣くのう…」
「だって…」
あの時のことが忘れられないんだもん。
薬指に貼ってある絆創膏に触れれば今でも鮮明に思い出せる。
それは私達がまだ中学生だった頃の話だ…
『イタッ!』
『どうした海!?』
『切っちゃった…』
不覚にもプリントで切ってしまった薬指を見せると、
仁王は何処からか取り出した絆創膏を直ぐに貼ってくれた。
『これでいいじゃろ』
『うん!ありがと!』
彼に手当てしてもらえたのが嬉しくて、お礼を言いながら薬指を眺めていると、
ふと、絆創膏がある物に見えた。
『…なんだか結婚指輪みたいだね』
軽い気持ちで言ったのに、
彼はその言葉にニヤリと笑うと。
『ほーう…』
と、意味深に答えた。
その反応を見たら急に自分の言ったことが恥ずかしく感じてきたので
慌てて言い直そうとしたが、目の前に居る仁王の真剣な表情を見たら何も言えなくなった。
『に、仁王…?』
『じゃあ…大きくなったら、結婚してくれんかの?』
『えっ…?』
『返事は?』
『…は…はい』
こうして、まだ幼かった私達は薬指の絆創膏に将来を誓い合った…という素敵な思いd
「…海!!」
「はい!?」
突然、雅治の声で現実へと引き戻される。
「何をボーっとしとる…」
思い出に酔いしれていたなんて照れ臭くてとても言えない…
「えーと…昔の雅治と会ってた!」
ニッと笑って誤魔化したが、
彼は訳が分からないという顔で眉間にシワを寄せた。
「なんじゃそりゃ…」
*END*
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