01
『倉間くぅーん!』
また来た…!
そう思った時には、遅かった。
『先輩待ぷっ』
『今日も可愛いね倉間君っっっ』
ぐりぐりぐり。
その豊かな胸の谷間に挟まれた挙げ句その人が抱き締めるもんだから押しつけられて圧迫されて…く、くるし、い…。
『ん、んんっ!』
『あ、ごめんね苦しかった!?』
『ぶはっ!!いい加減にしてください南沢先輩!』
ぜーはーと呼吸を整えて俺より高い位置にあるその顔を睨みつける。
アンタ自分の胸が(色んな意味で)凶器だってこと分かってないだろ!
若干涙目になる俺を、ふふふと笑いその人はごめんねと頭を撫でた。
『もう!抱きつかないで下さいよ!俺が南沢さんに睨まれるんですから!』
『篤志に?』
『そうです』
いささかややこしいが。
この人は南沢名前。俺は南沢"先輩"って呼んでる。もう一人、南沢"さん"って言うのはこの人南沢名前の双子の弟、南沢篤志のこと。
二人の容姿は本当にそっくりで、同じ性別に生まれていたら見分けが付かないだろうなと思うほど。
但し反して、性格は間逆。
弟の南沢篤志さんはあまり喋らないし、愛想もない。でもやるときはやるし、出来る人。
同じサッカー部でまぁ先輩の中では仲が良い方だと思う。…あんましゃべらないけど。
そんで姉の南沢名前先輩はホワホワしてて可愛いものが好きですぐ飛びついてきて、天然でドジでたまにアホ。
俺を見れば突進してくる。
なんと言うか可愛い上に胸がデカくて破壊力は抜群(色んな意味で)。
性格もお人好しで優しくて…だから男も女も彼女を嫌う人は居ないんじゃないだろうか。
だから、お姉ちゃん大好きな弟は気苦労が耐えない訳で。
…さっきの会話に戻る。
『篤志、過保護だもんね』
『いやそーだけどそーじゃないっつーか、』
ごらんの通り、天然である。
弟のシスコンに気付かないって言うか…この人も相当ブラコンと言うか。
『まぁ、良いや…頼むからあんま抱きつかないで下さいよ』
『はぁーい。たまににします…』
『……』
がっくりとうなだれる南沢先輩に、いやそうじゃねーよアホかお前はと言いたいが我慢した。
偶然南沢さんが通って暴言に対し暴言で返されるとかお決まりパターンが起こる可能性も無きにしもあらず。
今日の部活も平和に過ごしたい。(先輩関係になると毎回大変だから、俺が!)
『て、ゆーか。南沢先輩、いつも思うんですが何で俺に抱きつくんですか』
『可愛いから!』
即答かよ、オイ。
『そんなん、その辺の霧野とかでいいでしょーが』
『その辺の俺って何だよオイ』
あ、偶然霧野と神童が通りかかった。
ジトリと俺を見る霧野をシカトして。
『あら、霧野君に神童君、こんにちは』
『こんにちは、南沢先輩』
ぺこりと礼儀良く神童が頭を下げる。
可愛いっつーなら、こいつらじゃねーの?と二人が去った後に言えば、そりゃもう抜群の笑顔で俺を抱きしめた。
『だって私、倉間君のことが好きなんだもん』
柔らかい胸が俺を包む。
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そこで見つかった南沢弟に殴られる倉間(笑)
暴言ではなく暴力が来たかっこ泣きかっことじ
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