09




どうしよう。
どうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしよう


どうしよう?





どうしたら良いんだ。
俺は今大変な場面に遭遇している。

男・車田剛一!
出るべきか、立ち去るべきか!



『ご、ごめんなさい』
『何で?あの2年のチビとは別れたんだろ!?』
『あ、えっと…』
『南沢さん!俺だったら、君にそんな悲しい顔はさせないぜ!』
『あの、』
『だから、』
『私…』
『俺と付き合って!』

ぎり、と相手が名前の手を掴んだ。
痛そうに歪む名前の表情。
たまらず、前へ出ようとすればそれより先に声がした。


『名前?』


って、同じような声が。
言わずもがな、もう一人の南沢。
弟の篤志。


『!』
『ああ悪い、邪魔した?』
『篤志っ』

名前は駆けより南沢の後ろへ。
男はバツが悪そうに舌打ちするとその場を去った。


『あつし、』
『ん、』

よしよし。
南沢が名前を撫でる。
名前は涙目だ。

告白現場、つーのを初めて見たが…名前はモテる。
色んな奴が名前を狙っている。
だからこーゆーパターンも、有るんだろうなぁ…。








『俺、入学して10回は見てる気がします』

と、霧野が言った。

『まあ暫く南沢さん効果とか倉間効果で減ってたみたいですけど、また再開したんですね、告白ラッシュ』
『なんだ、知ってたのか』

ええ、まぁ。
はち合わせますから、何故か。
淡々と霧野はそう言ってのけた。

南沢がレギュラーへ上がり、そして10の番号を背負った時点で、そう言ったことは無くなったらしい。
サッカーで、しかもこの雷門中で、レギュラーでしかもエース10の背番号。
次いで言うなら頭だって相当良い南沢。

その双子の姉の名前に近づける奴など、無に等しかった。

そして。


『南沢先輩、倉間ラブだからなぁ』


挙げ句の果てには、名前本人が倉間に懐いてしまった。
それでは本当に、彼女を狙う男達は涙を飲み諦めるしかない。



『ちゅーか、言われてみれば俺も何回か見たなぁー』
『浜野もか?』
『お、俺たちも…何度か…』

おずおず、と一乃と青山が口を開いた。
しん、とする中、松風が

『南沢先輩、すごくモテるんですね!』

なんて今更な事を言って。

『俺は何回か同じ人が告白しているのを見ました』
『へ?』
『何ヶ月かして、同じ人が告白してました』
『うわー諦め悪い奴居るんだなぁ』


神童が頭を悩ますように、南沢先輩が心配になってきました、と言った。

『あの容姿に加え、』
『人が良いからなぁ、名前は』
『人の悪口言ってるのとか聞きませんよね』
『その代わり南沢の口が悪いからな』
『あ、言えてる』
『悪かったな、口が悪くて』

ははは、と笑って、空気が凍り付いた。
あー、南沢?いつの間に?

『お前等、何のミーティングだ?』
『えーっと、』

唇を綺麗に釣り上げる南沢は、目が笑ってなくて。
本と、こいつは名前の事になると人が変わるなぁ。
暫くしない内に倉間もやってきた。
南沢に睨まれ、ワタワタしている俺たちを訝しげに見て。

『…ミーティング、しないんスか?』
『あ、ああ!するする!』
『ほらみんな席に着け!』
『?』
『名前!昨日纏めたデータを、』
『三国さん、南沢先輩はまだ来てません』
『あ、そうか?』


神童の言葉に、
ん?と、南沢が首を傾げた。


『名前は俺より先にココへ来たはず、だけど…?』








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