君と僕とエトセトラ


((な、んですかその顔は…!))







『もしかしてさ、それが理由だったの?』
『え?』
『付き合ってるの隠してたの。"やだー名字さん中学生と付き合ってるの?ショタコンじゃーん"みたいな?』
『う、』
『…ごめん多分どう頑張っても僕の方が年上に見えるから安心しなよ?』
『く…っ』

なにその凄く気を使ってる感じ…。
いつもからかう癖にと毒づいた、忠君や他のメンバーと分かれた後の帰り道。






今日は一人じゃなくて何だかムズ痒い。


『名前の家行きたい』
『明日も朝練あるよ?』
『…なに、そんなに遅くまで居て欲しい訳?』
『…な、ち、違いますー』


私たちは家がお隣同士。
お互いの家が見えた所で蛍がそう言った。
見た所、月島家もウチもまだ電気は点いていないみたいだ。
同じ事を確認したらしい蛍は、いい?と小首を傾げる。
…私は昔からこれに弱い。


『…いいよ』

珍しく、彼が少し嬉しそうにした。









『け、けい!』
『うん、』
『なに、いきなり…!』
『ちょっと黙ってくれる?』

玄関のドアを閉めるなり、蛍は膝を折って私と目線を合わせた。
何だろうと思うより先に抱きしめられて。
久しぶりの蛍の温もりに、心臓が早くなる。


『…』
『蛍…?』
『うん、』
『…寂しかった?』
『…』
『蛍、』
『…なに、』
『私は、凄く寂しかったよ…』


私も背中に腕を回して力を込める。
蛍の耳、ちょっと赤いね。


受験の間しばらく会わないと約束した私たちは、家が隣だと言うのに全く鉢合わせることも無く過ごした。
私も部活や生徒会で忙しかったけれど、同じように学校へ行って部活をして…サイクル的には変わらないのにね?へんなの。

何ヶ月も声だけだったからか、今触れあってるのが不思議な気分。
僕も…。
消えてしまいそうな声で蛍が呟いた。




next





『名前…』
『えっちょっ!け、けい…!』
『…ありえない』
『なにがっ!』
『今完全にキスする流れだったよね?』
『き、きききす…!?』
『…えー…』
『な、んですかその顔は…!』
『……別に』







先は長そうだなと月島君は脱力しましたとさ。頑張れツッキー。




prev|next



- ナノ -