君と僕とエトセトラ


((ひゃく、はちじゅうはち…))








『蛍、いい加減手離して下さい…』
『嫌だ』
『くっ…何そのワガママ』
『我が儘じゃない』
『忠君が見てるよ』
『別に今更でしょ』
『う…忠くんっ』
『頑張って名前さん!』


ニコニコ。
忠君は嬉しそうに笑って両手を拳にした。

久しぶりだからと三人で一緒に帰るのは嬉しいんだけど、忠君は目の前でイチャイチャされて嫌じゃないんだろうか。
イチャイチャしてるつもりも、誰かが居るときはするつもりも無いんだけど、どうやら彼氏サマは見せ付けたいらしい。

蛍とは"彼氏"と"彼女"になってから初めて一緒の学校に通う事になる。
中学までの"幼馴染み"としての態度との違いに、私は少し戸惑って居た。


『そ、そう言えば!二人とも背伸びた?』

学校を出て並んで坂を下りる。
(この坂を下りた先に坂ノ下商店がある)
話題を変えないと、と思いついた事を口にすると蛍はぷっと笑った。


『名前は伸びてないね』
『うるさいですー』
『今188ある』
『………はっ!?』
『ツッキーもうちょっとで190センチなんですよー』
『うるさいよ山口』
『ごめんツッキー!』

ばっと見上げれば眼鏡越しの瞳とかち合った。
にやりと笑うその顔に殺意さえわく。


『ひゃく、はちじゅうはち…』


育ち盛りの男の子って、こんなに伸びるものなんだろうか。
確か私が直接会わなくなって、三ヶ月くらい…かな。うん。受験するからとか甘えたくないとかで電話だけになってそれから。


『ご、5センチくらい伸びてない?』
『伸びてるね』


嬉しそうに笑う彼は名前は何センチだっけーなんて聞いて来やがりまして。
ああ、もうほんと。

『ついに差が40センチの領域に達しちゃったね』
『なっ』
『だって名前伸びてないもんねー』
『く、う…っ』
『頑張れ名前さん』
『忠君まで…!』

慰めてるの?全然傷癒えないよ忠君!
どうやら忠君も後少しで180センチに到達するらしい。
サイドに居る二人を見上げる。
小学生の頃は(まぁ、蛍は元々大きかったけど)あまり変わらなかったのになと少し寂しくなった。





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『あっ名前さーん!月島、山口も!大地さんが肉まん奢ってくれるって!』
『わーい肉まんー』
『半分にしなよご飯食べれなくなるよ』
『む…』


坂ノ下商店前にて。
半分にした肉まんを、リスみたいに頬張ってもぐもぐしてる日向君にあげた。
大きくなるんですよ、日向君。
ノッポヤロー月島なんて追い越しちゃうくらいにね!





((ツッキー過保護…!!))←山口心の叫び




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